皆さんは日本の秋の風景と聞いて何を思い浮かべますか? 黄金色に輝く棚田、風に揺れるススキ、一面に咲くコスモスの花・・・様々な景色が目に浮かぶかと思います。山里や庭先の秋の風景として欠かせないのは柿の木でしょう。9月の半ばを過ぎ、残暑も和らぎすごしやすくなってきた時に赤く色づいた柿の葉や実を見ると、『秋』を強く感じられるかと思います。
 しかし、柿の自然な現象にみえる9月の葉や実の着色に病害虫が深く関係していることは、一般にはあまり知られていません。品種によって多少時期は異なりますが、本来柿の葉が赤く着色するのは10月下旬以降になります。柿の葉が9月に色づくのは、「落葉病」という病気によるものです。落葉病に感染した葉は、茶色の小さい斑点が現れ(細かく分けるとこの斑点の形により角斑落葉病と円星落葉病の2種類があります。)、葉の色が黄色や赤色に変わっていきます。斑点の数が多いと違和感を感じますが、少ないと自然に変化したものとして認識される方も多いようです。一方、果実に目を向けると、他の実がまだ青いのに赤く色づいた実が次々と現れる現象が放任樹(管理のされていない木)や無農薬の家庭果樹でよく見られます。これは、カキノヘタムシガという蛾の幼虫(通称ヘタムシ)によっておこるものです。名前の通り柿の実のへたの部分から内部へと食べ進んでいく害虫です。ヘタムシの入った実はやがて腐って落ちてしまいます。
 真っ赤に色づいた柿の葉は、見て楽しむだけでなく料理のつまものとして既に利用されている他,クラフトなどいろいろな利用方法が考えられます。現在、農業総合センターでは、柿の紅葉を毎年安定して作り出し商品として流通させるための研究を行っています。紅葉しやすい品種、気象に左右されない紅葉を生産する技術、柿紅葉の新たな利用法の開発、等について検討を進めています。

 豆知識 「家庭果樹での病害虫の防ぎ方」
 落葉病により通常の落葉期より1~2ヵ月早く葉が落ちてしまいます。柿の葉は緑色をしている間は果実収穫後でも翌年のための養分を作り貯める働きをしています。そのため、落葉病で早い時期に葉が全部なくなる状態が何年も続くと、柿の木は徐々に弱っていきます。落葉病菌のほとんどは落ち葉で冬を越しますので、落ち葉を集めて処分しておくと翌年の発生を減らすのに効果的です。農薬を使う場合は6月上旬と下旬に殺菌剤を散布します。9月に発生するヘタムシの被害を防ぐためには、8月上旬に殺虫剤を散布します。農薬は袋のラベルに書いてある登録内容を必ず確認してから使用して下さい。ヘタムシは1匹で3~4個の果実を食い荒らしますので、着色時期のおかしい実は見つけ次第取り除いておくと被害の拡大を防ぐことができます。へたの部分に茶色い粉のような糞が出ていますので、ヘタムシかどうかは簡単に判断できます。

hetamushiga

写真:(左)落葉病 (右)カキノヘタムシガ成虫


奈良県農業総合センター
果樹振興センター
栽培管理チーム 主任研究員 藤田博之

掲載日:2009年10月25日