第2回アジアコスモポリタン賞受賞記念奈良フォーラム

  アジアコスモポリタン賞受賞記念奈良フォーラム2014を開催! 

 
 
県と東アジア・アセアン経済研究センター (ERIA: Economic Research Institute for ASEAN and East Asia)は、本賞の受賞奈良記念フォーラム2014において授賞式典を12月21日、奈良県新公会堂で開催しました。

 平城遷都1300年記念アジアコスモポリタン賞は、2年に一度、東アジア域内における経済面・文化面での地域統合、域内の格差是正、持続可能な成長社会形成を主眼に、質的に充実した東アジア共同体形成に資する優れた貢献を行った個人・団体に対し、国籍を問わず贈呈される、今回第2回となる国際賞です。

 受賞記念奈良フォーラム2014では、授賞式典のほか、「大賞」受賞のマンモハン・シン氏 (前インド首相)のビデオメッセージ上映、「経済・社会科学賞」受賞のピーター・デーヴィッド・ドライスデール氏(オーストラリア国立大学名誉教授)とワン・グンウ氏(シンガポール国立大学上級教授)による対談、「文化賞」受賞の宝塚歌劇団の紹介映像、同賞受賞のリティー・パン氏によるトーク、二階俊博氏(衆議院議員)による基調講演等が行われました。

 22日には、天理大学杣之内キャンパスにてワン・グンウ氏が、奈良女子大学にてリティー・パン氏が特別講義を行う教育プログラムを実施しました。

 各賞受賞者のコメントは以下のとおりです。


■マンモハン・シン氏(前インド首相)  ※ビデオメッセージ

 今回の受賞は、インドの経済移行とインドと東アジアとの経済統合拡大における私の取り組みを認めていただいたものと理解している。私は、財務大臣時代には、国の経済的な潜在能力を引き出す手助けを行った。結果、インドの経済成長は今も進展している。首相になってからは、インドを東アジアの共同体に近づけた。貿易だけでなく、社会的、文化的、教育的、戦略的関係も、東アジアサミットを通じてより高く深いレベルとなった。東アジアサミットは2005年に創設し、社会的、経済的、成長的、環境的、戦略的な関心と目的をさらに推進するためのものであり、共に経済実績の最盛、2008年の不況、景気後退からの東アジアの回復を経験した。

 アジア的コスモポリタニズムの真の精神に基づき、また東アジアサミットの創設メンバーとして、私は米国とロシアを東アジア共同体に迎え、これを推進した。カンボジア、米国、ラオス、ロシアという多様な国々が団結したことは、東アジアの成長とそのコスモポリタニズムの精神を最もよく表している。

 ERIAは2007年、東アジアサミットから誕生した。インドは創設メンバーとして、当初からERIAを育んできた。7年という短期間にERIAが成長し、地域のみならず世界一流のシンクタンクとしての立場を確立したことを大変うれしく思う。日本とインドは文化的・宗教的な歴史を共有し、コスモポリタニズムの真の意味を世界に示している。共に平和を愛する社会であり、古くからの遺産と現代の発展を併せ持ち、共に民主主義の原則によって統治されている。

 この賞は、2010年の平城遷都1300年を記念してERIAが創設した。平城京は奈良に置かれた古代の都で、シルクロードの最終地点であり、東アジアの最初のコスモポリタン都市の一つであった。インドが歴史的にこの都市と繋がっていたことをお話できることを光栄に思っている。

 東アジアは、数年以内にその可能性をフルに発揮し、真に包括的でコスモポリタン的な社会に成長すると確信している。この地域が、域内で統合し、世界のその他の地域と統合して成長するという精神を、継続的に育んでいくことを願っている。ERIAには、引き続き東アジアの成長と統合に貢献してほしい。


■ピーター・デーヴィッド・ドライスデール氏(オーストラリア国立大学名誉教授)

 私は、長年、アジアの多元性について考え、平和で持続可能な繁栄のための仕組み作りを考えてきた。それと同じ理念を持つアジアコスモポリタン賞の受賞は、私にとって大きな意味がある。お互いの違いを認め、さまざまな文化、価値観を尊重し合うという理念を持つ本賞の受賞は大変うれしい。

 50年前に大学院生として来日し、日本とオーストラリアの関係再構築について研究する中で、多くの方と友好関係を築くことができ、コスモポリタンな社会をアジアでつくるという道を共に歩んできた。私はオーストラリアで第2次世界大戦を経験した。それは暗い時代で、アジアでコスモポリタンな社会を構築するなど難しいことだと思ったが、共に協力していく中で、私の夢が実現していくのを見てきた。 
 私は、今でもこの夢を持ち続けているし、今後もアジアのコミュニティづくりを進めていきたい。


■ワン・グンウ氏(シンガポール国立大学上級教授)

 東アジアで平和の構築、共同体の構築に尽力されている方々に感謝するとともに、私はこの夢が最終的に叶うだろうと信じている。私も長い間、何度も来日し日本との友好関係を築いてきた。1960年に初来日した当時、中国・東南アジアの研究は日本の学術界が進んでおり、日本の研究者からさまざまなことを学んだ。アジアはこの50年、経済・文化の近代化の過程で、さまざまな経験をし、さまざまな課題に直面した。ASEANも大きな出来事の一つであり、東南アジアの大きな課題を克服し、協力関係の構築に多大な業績を残してきた。新しい方法で地域の指導者が選ばれ、共に未来を作っていこうとするものであり、非常にコスモポリタンなものだ。この受賞を誇りに思うと同時に、この賞によってコスモポリタニズムがさらに推進されるものと考えている。


■小松公一氏(宝塚歌劇団理事長)

 100周年を迎えた年に本賞を受賞できたことを誇りに思う。宝塚歌劇団が100年続いてこられたのは、非常に多くの方々の支えがあったからだ。これからも、創始者の小林一三が唱えた「清く、正しく、美しく」をモットーに、老若男女全てのお客様に楽しんでいただける舞台をつくっていきたい。そして、この賞をいただいたことで、アジアの一員としての誇りを持って、今後も頑張っていきたいと思う。


■リティー・パン氏(映画監督)

 カンボジアでは20年以上続いた内戦、クメール・ルージュによるジェノサイドで、人口の4分の1が亡くなり、私たちのアイデンティティも社会も粉々に破壊された。これからの世代が再びこのような悲劇に見舞われてはならない。私は、国の再建のため、将来の平和のために、全てのエネルギーを掛けて、この記憶を留める仕事をしてきた。地域全体の発展には、国の発展と同時に、地域におけるアイデンティティも重要だ。文化的な発展を伴った経済共同体の創設が、今世紀の課題となる。文化的、社会的な多元性を尊重しながら、経済発展と共に、最も弱い人の権利を維持し、平和な文化を構築しなければならない。この観点から、本賞の受賞を心から光栄に思う。

平城遷都1300年アジアコスモポリタン賞とは

     

「平城遷都1300年記念アジアコスモポリタン賞」(※)は、東アジア域内における文化面、経済面での地域統合、域内の格差是正、持続可能な成長社会形成を主眼に2012年に創設され、質的に充実した東アジア共同体形成に資する優れた活動を行った個人・団体に対し、国籍を問わず、本賞発案の地、奈良県において原則2年に1回、贈呈するものである。

(※)令和2年7月13日「奈良平城京-ERIAアジアコスモポリタン賞」に名称変更


 
  大賞 マンモハン・シン 前インド共和国首相      
 1932年生。前インド共和国首相(2004年~2014年)。1948年パンジャーブ大学経済学部卒業。
オックスフォード大学ナフィールド・カレッジにて博士号取得。大蔵大臣を初め、数々の要職を歴任。1991年から上院議会議員。2014年秋、桐花大綬章を受章。
 多民族国家インドをアジアと連結させ経済成長に導いた原動力 
シン博士は激動のアジアにあって半世紀にわたり発展の基礎となる平和と安定、経済成長と格差の縮小に尽力した。そして持続可能な社会的成長の確立への途を拓く先駆者としての比類のない貢献に対してアジアコスモポリタン賞大賞が授与された。博士はインドの指導者として地球上のモデルとも言うべき、最大の多民族、多言語、多宗教の高度民主主義国家を律してきた。東アジアサミットという場の具現化に尽力した博士の高い志と人格を大いに賞賛するものである。
 
 
 
経済・社会科学賞 ピーター・デーヴィッド・ドライスデール オーストラリア国立大学名誉教授
 ニューイングランド大学経済学部卒。オーストラリア国立大学にて博士号を取得。専門分野:東アジア経済論、日本経済政策論、国際貿易政策論。2001年旭日中綬章を受章。
 アジア太平洋における経済発展と経済統合の推進役

アジア太平洋経済協力(APEC)の発足と発展への学術的な大きな貢献を始めとした、アジア地域にかける経済連携の推進に関する長年の功績を称え、アジアコスモポリタン賞経済・社会科学賞が授与された。国際貿易・経済政策と外交、東アジア経済、オーストラリアとアジア太平洋との経済関係および直接投資等に関する長年の博士の研究はオーストラリア、東アジア、太平洋地域の政策に大きな影響を与えてきたことは特筆に価する。

 
 
 
経済・社会科学賞 ワン・グンウ シンガポール国立大学上級教授/オーストラリア国立大学名誉教授
 他にリー・クァン・ユー公共政策大学院役員会会長等の要職にある。主に華僑、華人の移民について研究している歴史学者。1994年福岡アジア文化賞受賞。
 異文化交流と教育の重要性を広めたアジア随一の学者・歴史家

アジアに焦点を当てた学術研究および教育活動と異文化交流の重要性を認知した功績を称えアジアコスモポリタン賞、経済・社会科学賞が授与された。博士は今日のアジアにおいて、アセアン経済発展の一翼を担う華僑を含む中国移民の活動の研究と中国および東南アジアの文明化研究の第一人者である。また香港大学学長をはじめ世界各国の大学・組織で枢要なポストを歴任してきた博士は教育者としてもその足跡を残している。博士が尽力したこれらの功績は将来の幾世代にわたって道標とインスピレーションとなることが期待される。

 
 
 
文化賞 宝塚歌劇団 
 1914年に兵庫県宝塚市で初公演を行って以来、今日も人気を集める未婚の女性だけで構成された歌劇団。現在では年間公演数約1,300回、観客動員数約250万人を誇る劇団となり、2014年には100周年を迎えた。
 アジアの発展に不可欠な女性の持つ可能性を深く追求し、体現する歴史ある歌劇団

アセアンの文化共同体形成に向けた最優先課題である教育と女性の社会進出を体現している宝塚歌劇団に対して第2回アジアコスモポリタン賞文化賞が授与された。女性のみの歌劇団として、男性の役割も女性が演じきることで、男女の能力における平等、女性の持つその可能性を深く追求し、多くの女性に夢と感動、社会進出に対する勇気を与えてきた業績は唯一のものであり、模範たるに値する。アジアを含む海外展開をより積極的に展望している中で、この劇団の価値観が広く共有され、女性の積極的貢献による持続可能な東アジア共同体を構築する礎となることを期待する。
 

 

 
文化賞 リティー・パン 映画監督
 カンボジアの映画監督。強制労働収容所で家族を失いながらも生き延びる。「消えた画 クメール・ルージュの真実」は2013年カンヌ国際映画祭「ある視点賞」を受賞。ボファナ視聴覚資産センターの創設メンバーの一人。
 人間の尊厳を見つめなおしアセアン市民としてのアイデンティティを問うた映画監督
東アジア共同体という遥かな理想の形成への文化的貢献から第2回アジアコスモポリタン賞文化賞は映画監督、リティ・パン氏に授与された。氏の代表作である「消えた画 クメール・ルージュの真実」は、人間の尊厳を根底に置き、その存在理由を否定したクメール・ルージュの虐殺という悲劇を真っ向から捕らえた。その作品の気高さと手法の斬新さ、作品の背後に存在する含意は、絶望の中にも存在するアジアの英知というべきものに光を当てた。アセアンが共同体形成に向けて重要な時期を迎えるにあたって、彼の業績は各国に原点に立ち戻り、困難に立ち向かう勇気を与え、それを鼓舞するものである。
 
詳しい受賞理由 

アジアコスモポリタン賞 受賞記念奈良フォーラム




受賞記念フォーラム

2014年12月21日(日)13:30~17:20

13:30~14:40

第2回 平城遷都1300年記念アジアコスモポリタン賞 授賞式


14:50~17:20

アジアコスモポリタン賞 記念フォーラム

● 基調講演:「アジアの世紀」

 

 

     

       

二階 俊博 衆議院議員    

1939年2月17日生 中央大学法学部卒業 所属政党 自由民主党 衆議院議員11期目
運輸大臣・北海道開発庁長官(小渕内閣、森内閣)、経済産業大臣(小泉内閣、福田内閣、麻生内閣)、自民党総務会長、衆議院予算委員長を歴任。現在、自民党総務会長(3度目)、自民党国土強靭化総合調査会長、(一社)全国旅行業協会会長

 

 
●受賞記念メッセージ
 大賞 マンモハン・シン (前インド共和国首相) レポートを見る


●受賞記念プログラムI:経済・社会科学賞対談「アジアの世紀到来か?経済と歴史からの視点」

ピーター・デーヴィッド・ドライスデール(オーストラリア国立大学クロフォード公共政策大学院名誉教授兼客員フェロー)
ワン・グンウ(シンガポール国立大学上級教授)
モデレーター:木村 福成(東アジア・アセアン経済研究センター(ERIA)チーフエコノミスト、慶應義塾大学経済学部教授)
  moderator                  

東アジア・アセアン経済研究センター(ERIA)チーフエコノミスト。慶應義塾大学経済学部教授。1982年に東京大学法学部を卒業後、1991年にウィスコンシン大学経済学博士号を取得。専門は国際貿易論、開発経済学。

                                                                          
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●受賞記念プログラムII:文化賞1
 宝塚歌劇団
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●受賞記念プログラム3.:文化賞2
リティー・パン(映画監督)
インタビュアー:岸野 令子(映画パブリシスト)
 
 interviewer      

                            

映画パブリシスト、映画配給会社代表。日本における海外の映画作品、主に単館系作品の宣伝にたずさわる。「世界中の素晴らしい映画作品を日本で紹介する事が自分の仕事」と思っている。リティー・パン監督作品「消えた画 クメール・ルージュの真実」も岸野氏の宣伝作品。     

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教育プログラム「特別講義」

2014年12月22日(月)9:00~10:30

天理大学「 東南アジアと国際関係」 講師:ワン・グンウ
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奈良女子大学「 Making a Memory 記憶をのこすということ」 講師 : リティー・パン



主催:
奈良県 東アジア・アセアン経済研究センター(ERIA)
奈良県 eria_banner アジアコスモポリタン賞授賞記念奈良フォーラム

協賛:ANA

ANA

お問い合わせ

国際課
〒 630-8501 奈良市登大路町30
国際交流係 TEL : 0742-27-8477
東アジア連携係 TEL : 0742-27-5821