奈良のむかしばなし

 






 奈良盆地に美しい山容を見せる大和三山。畝傍山、耳成山、天香具山。中でも天香具山は、もとは天にあって、それが降りてきたとの神話から、とくに神聖視されてきた。
 その天香具山の南麓、橿原市南浦に天岩戸(あまのいわと)神社がある。今回は、その神社に伝わる『古事記』でもおなじみのお話。
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 昔、天照大神(あまてらすおおみかみ)という、天を照らす姉神さまと、須佐之男命(すさのおのみこと)という乱暴な弟神さまがおられた。
 天照は、乱暴な弟が怖くなり、天の岩戸に隠れてしまった。そのため、太陽は昇らず、暗闇の毎日が続いた。
 困った八百万(やおよろず)の神々が集まり、天照になんとか岩戸から出てきていただこうと相談した。
 「そうだ、踊りの上手な天宇受売命(あめのうずめのみこと)に頼もうではないか」
 いよいよその日。天宇受売は天香具山のひかげの蔓(かずら)を襷(たすき)にかけ、まさきの葛(かずら)を髪に飾り、天香具山の笹の葉を持ち、桶(おけ)を伏せてそれを踏み鳴らしながら神がかりして踊った。
 その踊りがあまりに楽し気であったため、見ていた神々は「ゆかい、ゆかい」と手をたたき大いに笑った。
 天照は、不思議に思った。「いったい、何が起こっているのか」。
 天照は、岩戸を少し開け、外をのぞいた。と、その瞬間、力自慢の手力男命(たぢからおのみこと)が岩戸を開け、天照を外へ連れ出した。それからは、もとの明るい世になったという。
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 このお話には続きがある。天宇受売が踊った時、手に持っていた笹は「七本竹」と呼ばれるようになり、毎年七本生え、七本枯れるという伝承をもつ。
 今、天岩戸神社の一帯は、天を衝(つ)くような背の高い竹に鬱蒼(うっそう)と覆(おお)われ、空の色も見えないほど。竹の葉ずれの音だけが、薄暗い静寂の中にさわさわと聞こえてくる。

天岩戸神社
 小さな鳥居の向うに拝殿がある。天照大神を祀るが、本殿はなく、拝殿の後ろにある天照大神が隠れたとされる岩穴を拝する形をとる。玉垣の向こう、竹やぶの中に今も四個の巨石がある。


天の香具山国見会
 会は、『万葉集』の中、舒明天皇が天香具山に登って国見をされ、五穀豊穣を予祝した時の歌に因む。橿原市文化協会が主催。万葉歌をテーマとした講演、また天岩戸神社、天香山(あまのかぐやま)神社、藤原宮跡など香具山周辺の現地講座も。次回は9月19日開催予定。


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