中瀬ゆかりさんにインタビューを行いました!

中瀬ゆかりさんにインタビューを行いました!

2017年9月1日(金曜日)東京都新宿区矢来町の新潮社にて、新潮社出版部部長の中瀬ゆかりさんに、インタビューを行いました。学生時代や就職活動の思い出、お仕事で大切にされていることなど沢山お話いただきました。中瀬さんは「女子大学生ワーク&ライフEXPO」で記念講演をしていただく予定です。

中瀬さん

学生:初めに中瀬さんが編集者になられた経緯についてお聞きかせください。

中瀬ゆかりさん(以下、敬称略):私は子どもの頃から文学少女で、暇さえあれば本を読んで過ごしてきました。中学生の頃に小説を書いた時期もあったのですが、早いうちに自分には作家になる才能がないことを感じ、書く道をあきらめ、かわりに、作家と非常に近い関係の中で寄り添う編集者という職業になんとなく憧れるようになったんです。
そして大学生になり就職について考えた時、子どもの頃から憧れていた編集者として、出版社で働きたいと考えるようになりました。

ちょうど私が就活をした時期は男女雇用機会均等法が施行された年なのもラッキーでした。新潮社が四大卒の女性にも総合職採用の門戸を広げるという情報を大学の友人から聞きつけ、京都での採用試験に挑戦することになりました。

面接当日は緊張しないように暗示をかけましたね。「緊張して人生の大切な機会を逃してしまうくらいなら、リラックスしよう。この会社と私に縁があれば必ず結ばれるんだから」と自分に言い聞かせた。そうするとすっと体の力が抜けて、面接も話が盛り上がり、トントン拍子に合格できました。


学生:面接という人生を大きく左右させる場で緊張せずにいられるというのは、度胸のある学生さんだったのですか?


中瀬:
いえいえ、それは全く逆。今もテレビに出るとき、毎回緊張するくらいのアガリ症ですよ。でも人生のポリシーとして、“緊張してしまって人生を棒に振るくらいなら、自分らしさを出そう。”といつも思っています。力を出し切ってそれでもダメなら、ご縁がないということであきらめられるから…。面接当時の成功体験が今も生かされているのかな。


学生:女性が働く場で少数であった時代に、厳しい風当たりや働くことの難しさを感じたことはありましたか?


中瀬:
新潮社は創業120年の老舗で堅いイメージがあるかもしれません。しかし実は社風は自由で業界でも早くから女性の取締役や編集長が誕生しています。編集者という仕事は作家に寄り添って、細かいことに気を配る仕事です。私は編集者というのは女性にとても向いている仕事だと思っていて、今でも女性がたくさん活躍している業種ですし、当時から女性だからという理由で悔しい思いをすることはありませんでした。入社した時から担当を与えてもらいチャンスもたくさんもらえましたから、会社には感謝しかありません。もちろんそれは、それまでの女性の編集者たちが切り開いてくれた道があったからこそ、と思うので、前を歩いて苦労して下さった女性の先輩方には感謝しています。そういう意味で自分は社風にも時代にも恵まれたと思っています。



学生:
自分が活躍しやすい環境があると、より会社にも愛情が湧くような気がします。


中瀬:
そうですね。当時は男性がメインで女性は補助的な扱いをしている会社が沢山あったのですが、私の(就職先の)選択は私自身に合っていたと思っています。私は今でも「生まれ変わっても新潮社に入りたい。」と話しているんです。会社に惚れぬいて30年間やってこられたのは幸せなことだと思います。会社と私の相思相愛が続く限りは仕事を続けるつもりです。

岸本

学生:素敵なエピソードです。私もそう思える場で働きたいです。
日々お忙しい中で、体調管理やプライベートとの両立など、仕事を続ける中で心がけていることはありますか?


中瀬:
バカみたいにシンプルですが、しっかり食べてしっかり寝ることです。私はとくに睡眠不足が最も堪えるタイプですが、体調を管理するのは仕事の上で大切なことだと思い気を配っています。体調不良で倒れたのは実は一度だけで、テレビ出演の日には声が出なくなることもなく、風邪も休みの土日にひくようになりました(笑) なぜか月曜の朝になると復活しているんです。海外にもよく行きますが、現地の水を飲むことには気を付けたり、日々の生活で食あたりの起きそうな食べ物は控えるようにしています。お酒の量も含め、どの程度で自分の体調が悪くなってしまうのか把握できるようになることが仕事をする大人のふるまいだと思っています。


学生:大学時代を振り返ってこれをやっておいて良かった、反対にやっておけば良かったと思うことはありますか?


中瀬:
やっておけば良かったと思うのは勉強です(笑)とてもよく遊ぶ学生だったので、一般教養から専門的な知識までもっと身につけておけば良かったと思っています。勉強だけをしていれば良いという贅沢な時間を学生時代はもらっていたのに・・・と少し後悔しているんですよ。

でも反対に沢山遊んでおいてよかったと思うこともあります。恋愛を通じて自分より相手を愛することを学びましたし、遊びの中で得たコミュニケーション能力や、その他にも失敗の中でタフさやトラブル解決能力、当事者能力が身につきましたね。

あとは、もっと本物をみればよかった、ということですかね。美術館や展覧会が奈良、大阪、京都と近くにあったにもかかわらず、そういうところに行く学生ではありませんでした。映画は好きで月2,3本観ていましたが、入社すれば年間200本も見ている人たちがいて、圧倒的に数が違うんです。奈良にいる間から何かを極めておけばよかったと思いますね。近くに歴史ある寺院が数えきれないほどある環境でしたし、奈良のことを聞かれれば自信をもって答えられるくらいになっておけばよかった、と。


学生:奈良に住んでいると地元のありがたさというのは近すぎてなかなか気づかないものです。


中瀬:
そうですよね。どれだけ恵まれた環境であるかということを、先日奈良を久しぶりに訪れて改めて感じました。毎日散歩すればよかった。これから奈良で過ごされる方は観てないところは全部巡って!と声を大にして言いたいなあ。

中瀬さん・岸本
(左:中瀬さん、右:岸本)

学生:
最後に、学生に対してメッセージをよろしくお願いします。


中瀬:
最近、巷では女性活躍が叫ばれていますよね。私の一世代前は編集者をしながら結婚をするというのは難しかったようです。その中で独身の女性の先輩たちが切り開いてくれた道があり、私たちの世代は、結婚はできるようになり男性も家事をするのは当たり前になってきましたが、まだ子どもを持つのは大変でした。私自身、37歳で編集長になった時は丁度子どもを持つか迷っている時期でした。しかし、会社からせっかく編集長に任命されたのに、出産で仕事を休むことで、後輩の女性達に迷惑がかかるのではないかと思ったんです。今だとこの話はナンセンスと思われるかもしれませんが、私たちの世代はそうでした。キャリアをとるか母になるかという選択を迫られたとき、私は仕事が好きだったし、女性の編集長もなかなかやるな…と思われたいという気持ちもあったので、迷わず仕事をとりました。後悔はしていませんが、私の後輩の世代が、子どもを持ちながら軽やかに編集長をしていたりする、そういう姿をみていると、どんどん時代は良くなっていると感じています。

まだ保育所問題など解決しなければならないことはありますが、この30年で確実に道幅は広くなっていると実感しています。まだ100%というわけではないけれど、まず昔より格段にチャンスが広がった時代に働けることの有難さを噛みしめてほしいです。

また、私は男女が完全にイコールである必要はないと考えています。もちろん人権などは平等に認められるべきですが、男女には違いもありお互いを補い合って、それぞれの役割や長所・弱点を尊重しあって認め合っていけば、結果として男女問わず頑張れるのではないでしょうか。
今の若い世代の人には、前の世代の女性達の頑張りで今の道が開けたことを知っていてほしいし、また次の世代にもその道を繋げてほしいです。それをたゆまず続けていくことが必要であり、後退してはいけないと思います。

また、ツールが進化してどんどん便利な時代になっていることについても注目してほしいです。私が入社したころ先輩によく言われたのは、「コピー機がある時代でうらやましい。」ということでした(笑)昔は原稿を直接飛行機で運んでいたのが、ファックス、Eメールと新しいツールが発明され、時間とパワーが節約できるようになってきています。そこで、その余った時間やパワーを何に使うか考えてほしいですね。空いた時間でスマホをいじってすごすのはもったいない!

私はイマジネーションの翼を広げるなど、自分を磨く時間に使ってもらいたい。特に本を読むのは最高にコスパのいい体験だと信じています。当日はそんな話もしたいですね。


学生:
お話ありがとうございました。

 

インタビューをした学生の一言

岸本真実:
「生まれ変わってもまたここで働きたい。」そう思えるような職場で働けるのはとても素敵なことです。
そしてそれは、「人生の大事な場面で緊張せずに自分を出し切る」、「体調管理も大切な仕事」、「自分を磨く時間を大切にする」・・・という中瀬さんの沢山の信条が生み出されたご縁だとお話をお聞きして感じました。
10月21日記念講演当日も、私たち学生がこれから社会に出ていくために勉強になるお話がたくさん聴けることとても楽しみです。

中瀬ゆかりさんプロフィル

* 中瀬ゆかりさん *
新潮社出版部部長/コメンテーター
和歌山県出身。奈良女子大学文学部英米文学科卒業。1987年新潮社入社。「新潮45」編集長、「週刊新潮」部長職 編集委員等を経て、2011年4月より現職。
「5時に夢中!」(TOKYO MX)、「とくダネ!」(フジテレビ)、「垣花正 あなたとハッピー!」(ニッポン放送)などに出演中。

「女子大学生ワーク&ライフEXPO」記念講演

とき:10月21日(土曜日)13時15分~14時15分
会場:奈良女子大学 第二体育館
 

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