奈良のむかしばなし


奈良のむかしばなし
奈良に古くから伝わる
むかしばなしをご紹介します。
大師(たいし)の硯石(すずりいし)
文・山崎しげ子
 奈良県東部の大和高原、中でも自然が豊かな山辺郡山添村。美しい山容を見せる神野山(こうのやま)の山裾に、今では一面が緑の苔でおおわれた大岩がある。その大岩に伝わる不思議なお話。
 昔、弘法大師(こうぼうだいし)が神野山へ登られる時、村人が道案内をした。大岩のところで、お大師さんが村人に尋ねた。
「何か困っていることはないか」
「はい、ここは山奥で、塩がないため暮らしが大変です」と村人は答えた。「それでは、この地に塩が出るようにしてやろう」
 お大師さんはそう言って、お経を唱えながら、錫杖(しゃくじょう)で大岩を二、三度ポンポンとたたいた。すると、大岩にポコンと穴があき、塩水が湧き出した。そして、その塩水からとった塩を村人たちに分け与えた。
 それからというもの、大岩のくぼみの塩水は溢れることも、絶えることもない。大岩が硯石のような形をしていたので「大師の硯石」と言い、村を大塩と呼ぶようになったそうだ。
 海のない奈良県、しかも山の中の山添村になぜ塩水が出たのか。岩塩の鉱脈も、煮詰めればわずかに塩がとれるという温泉もない。思えば、不思議なお話である。
 かつて、奈良時代、都であった平城京に伊勢国(三重県)から税として「塩」が運ばれた記録が残る。また、「大師の硯石」の近くにある「塩瀬(しおせ)地蔵」(鎌倉時代)の前の道は、奈良と伊勢を結ぶ街道のひとつである。山添村を通り、人と物が盛んに往来していたようだ。
 江戸時代、伊勢神宮へ集団で参拝する「おかげ参り」の人たちも通っていたであろう。菅生(すごう)の地に「おかげ踊り」が今も残る。
 と、ここまでたどってみたが、さてさて、村人たちの生活を豊かにしたあの「大師の硯石」の塩水は、いったいどこから来たのか。お大師さまに尋ねてみたいところである。
大師の硯石
 山添村には「磐座(いわくら)」と言われる古代から信仰されている巨石が多くある。大師の硯石のある神野山は、山頂まで遊歩道が整備され、岩で天の川を表しているといわれる鍋倉渓や北斗岩などもある。硯石へは、小さな看板を目印に道路から40mほど山を下る。
 神野山では冬、夏は天体観測が、晩秋から早春は早朝の雲海が楽しめる。
物語の場所を訪れよう
大師の硯石(山添村大塩)へは…
JR・近鉄奈良駅より山添村方面行きバス北野バス停下車約2.4km
地図
山添村教育委員会事務局
TEL
0743-85-0049
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