【レポート】農林漁業の振興策は?「第9回東アジア地方政府会合」が開催されました

東アジア各国の地方政府が集まる国際会議です


【ナラプラス現地リポート】

「東アジア地方政府会合」は平城遷都1300年を記念して奈良県が中心となって提唱し、毎年開催している国際会議です。東アジア各国の地方政府の代表が、地域の実情や課題を報告し合い、共通する課題の解決に向けた議論を行うことで、相互理解を深め、地方政府の行政能力を高めることを目的としています。

2018年11月1日~3日に開催された第9回会合では、地方政府の関心が高い2テーマについて討議が行われました。

・テーマ1「農林漁業の振興」
・テーマ2「グローバル化社会における人材育成」

会合の内容の一部をレポートします。


東アジア地方政府会合1
討議は、荒井正吾 奈良県知事の挨拶から始まりました。“各国の地方政府がお互いに学び交流を深め、その成果を地域の振興につなげることを目指す”など、会合の意義についてあらためて触れられました。

東アジア地方政府会合2
メインセッション会場では、1つの討議テーブルに各地方政府の首長級参加者等代表者が一堂に会し、意見交換を行います。午前中はテーマ1「農林漁業の振興」について、午後からはテーマ2「グローバル化社会における人材育成」について、活発な議論が交わされました。

東アジア地方政府会合3
サブセッション会場では、各地方政府の事例発表をもとに、各地方政府の実務担当者が抱える課題や地域の実情、実際の取り組みなどを共有します。午前中はテーマ2が、午後からはテーマ1が話し合われました。


日本の農業は、規模は小さいが“成長産業”に

東アジア地方政府会合4
テーマ1「農林漁業の振興」の講師は、藻谷浩介氏(株式会社日本総合研究所 主席研究員)です。平成合併前3,200市町村の全て、海外99ヶ国を自費で訪問し、地域特性を多面的に把握。地域振興や人口成熟問題に関し精力的に研究・著作・講演を行っていらっしゃいます。

東アジア地方政府会合5
藻谷氏のスピーチでは、日本の農林漁業の現状について鋭い分析があり、あらためてその重要性を再認識させられる内容でした。

[1] 規模は小さいが成長産業に
農林漁業は、かつてはGDPの7割ほどを占めていた。2016年度はわずか1.2%にしか過ぎないが、肉と野菜を中心に2010年ごろから急速に出荷額が伸びてきている。10年前まではほぼ0だった輸出額も、1.1%に達している。

[2] 6次産業化でのシナジー拡大
工業、福祉、教育、観光などと結びつき、大きく伸びている。
福祉の事業者が農業に参入する事例も。知的障害のある子供たちが作業に当たったりしているが、給与は健常者と同じ。岐阜県の「飛騨里山サイクリング」など、里山の風景を見て農家の方たちと触れ合うツアーが人気に。

[3] 国土保全機能
天災から国を守る機能。日本の66%は森林であり、これを守っているのが林業。

[4] 高齢者にとっての自給農業の重要性
日本全体の農業の売上は、トヨタ自動車1社よりも少ないが、従事する労働者数は圧倒的に多い。しかも“65歳以上の高齢者が多い”という点が重要。日本では都会にも小さな農地が残っているおかげで、高齢者が身近に農業に取り組める。
奈良県は農地が多いため、リタイアしてから自分で農業を行う人も多い。生活保護率が低い一因になっている。

中国や韓国でもこれから急速に高齢化が進むため、日本の農業の現状は参考になるそうです。“日本では農業が成長産業へと転じている”という点は意外性をもって受け止められ、各国の参加者からも盛んに言及がありました。


韓国・慶州市、忠清南道など海外事例の報告も

東アジア地方政府会合6
続いて、杦本龍昭 下市町町長より「下市町 農林漁業分科会」についての報告がありました。
・急傾斜地での“柿”の栽培は、高齢化で続けるのが難しくなっているため、営農期間を10年長くする「らくらく農法」の開発が急務だった。
・電動運搬車を導入したり、体をほぐす「らくらく体操」を取り入れる。重い果実から、軽い葉っぱ(柿の葉寿司用)への転換にも取り組む。
・過疎化、農家の後継者・人手不足などの問題を解消し、移住定住を促進するため、援農プロジェクト「シモイチナジカン」も立ち上げ、成果があった。

大企業と差別化するために“質のいいものも少しだけ作って高く売る”という考え方について、中国・甘粛省の代表者から漢方薬の事例などが報告されました。荒井知事からは、「アメリカのコーン畑などは工業に近い。東アジアの農業が進むべきは、工業とは違う方向性だ。」との意見も出されました。

東アジア地方政府会合7
続いて、韓国・慶州市長からの発表です。

・かつては新羅の都が置かれた、韓国を代表する歴史ある都市。高齢化率が急上昇していて、韓国平均を上回る20%に。若者が都会へ出て農村へ戻ってこないため、農村部では60歳以上の人口が65%にも達している。
・市長に就任してから新たに農業局を作った。農畜産物を地元で消費するための施策も。環境や品質の認証制度なども導入して高品質化を目指している。

これに対して、中国・山東省の代表者からも、農村部で急速に高齢化が進んでいる状況が報告されました。全体の生活水準も上がり、質の高い野菜が求められてきているため、農業の近代化を進めているそうです。

東アジア地方政府会合8
韓国・忠清南道の担当者からは、「忠清南道『2018東アジア地方政府の三農フォーラム』」の実施報告がありました。

・「東アジア地方政府の三農フォーラム」とは、農業システムの似ている東アジア地方政府間で共同の取り組みと協力を強化するもの。第5回東アジア地方政府会合の席にて韓国・忠清南道より提案され、2018年は忠清南道で開催された。
・テーマは「安全な食」「農村の再編」「気候変動への対応」「公的援助(ODA)」など。
・三農フォーラムの定例化により、東アジア地方政府の“持続可能な農業・農村”実現にむけた共同の取り組みと国際交流協力の活性化が進んだ。

この報告に関して、重岡成氏(近畿大学農学部 教授)から、就農者を増やすための取り組みが紹介されました。女性や高齢者などにも農業に興味を持ってもらえるように、行政や教育者とも連携。ブランド力を上げる、地産地消をさらに進めるなどし“最低限の収入が確保できる”ことが重要なのではないかとのご意見でした。


自由討議の席では、活発に意見が交わされました

東アジア地方政府会合9
森川裕一 明日香村長からは、景観保全などの規制がある村での事例が紹介されました。棚田が多く農業規模は大きくできませんが、明日香ブランドの浸透もあり、生産された農作物の6割以上が地元で販売されているとか。修学旅行生に少人数ずつ農家に宿泊体験してもらう取り組みなども行われているそうです。

東アジア地方政府会合10
並河健 天理市長からは、過疎地のインフラを維持するためのユニークな取り組みなどが紹介されました。人口減少が著しい山間部では、公立学校が廃校の危機にあります。天理市では、市街地に暮らす生徒でも山間部の学校へ通うことができるという制度を設けたところ、生徒数が3割ほど増えたのだとか。学校の問題で家族全員が転出してしまうケースなどもあったことを考えると、効果は大きいでしょう。

東アジア地方政府会合11
県外の地方政府の発言もありました。柵木環 山梨県副知事からは、研修制度を整えるなどの対策が奏功し、新規就農者が年間300人以上にものぼった事例が報告されました。

東アジア地方政府会合12
会合の別室では、地方政府の紹介コーナーも設けられ、各地域の魅力がわかるパンフレットやポスター、特産品の展示などが行われました。奈良県産富有柿の試食会なども開かれ、好評を博したようです。


第9回東アジア地方政府会合 (※終了しました)

●日時:2018年11月1日(木曜日)~3日(土曜日)
●会場:ホテル日航奈良
●討議テーマ及び講師
・テーマ1「農林漁業の振興」
講師:藻谷浩介氏(株式会社日本総合研究所 主席研究員)
・テーマ2「グローバル化社会における人材育成」
講師:田中修氏(奈良県立大学特任教授、財務総合政策研究所中国研究交流顧問)
●会員数:7カ国 72地方政府(内訳:中国16、インドネシア2、マレーシア1、フィリピン3、韓国8、ベトナム5、日本37) ※平成30年9月1日現在
●主催:奈良県
●後援:総務省、外務省、(一財)自治体国際化協会


(リポート・写真 / ナラプラスライター N)


(記事投稿者)
奈良県庁広報広聴課 髙塚・金田
電話番号 0742-27-8325

この記事を読んで「いいね!」と思ったらお友達にシェアしていただけると嬉しいです。



このエントリーをはてなブックマークに追加

こちらで更新情報をお届けしています!

Facebookページ まるごと奈良県リンク先(Facebookサイトへ移動します) Twitter せんとくんのつぶやき(twitterサイトへ移動します)

スマホアプリ『ナラプラス』で奈良県の最新情報をゲット!

スマホアプリ「ナラプラス」

このアプリでは、奈良県の地域の話題、奈良の観光や食、文化など、おでかけの情報や、くらしに役立つ情報、災害情報などを中心に記事を配信しています。

アプリの紹介記事ページへ移動する

ナラプラス春ver.

このアプリでは、奈良県の地域の話題、奈良の観光や食、文化など、おでかけに情報や、くらしに役立つ情報、災害情報などを中心に記事を配信しています。

アプリの紹介記事ページへ移動する

 

お問い合わせ

広報広聴課
〒 630-8501 奈良市登大路町30
報道係 TEL : 0742-27-8325
広報紙係 TEL : 0742-27-8326 / 
FAX : 0742-22-6904
放送制作係 TEL : 0742-27-8056
県民相談広聴係 TEL : 0742-27-8327
相談ならダイヤル TEL : 0742-27-1100