特集1

県民だより奈良
2020年7月号

特集1
新型コロナウイルス感染症
拡大防止 最前線リポート
新型コロナウイルス感染症と闘う最前線の現場の声をお届けします。
対策の最前線
奈良県の備え
PCR検査の実施数・検査可能数
PCR検査の実施数・検査可能数グラフ
病床の確保数
区分 感染小康期 感染再拡大期 感染まん延期
重症 156床 289床 422床+α
(500床の確保を目指しています)
中等症
軽症 宿泊療養
108室
宿泊療養
108室
宿泊療養
108室+α
※6月4日時点
感染者の早期発見・早期入院治療を徹底することが大切です。
県医療政策局 鶴田 局長
県医療政策局
鶴田 局長
PCR検査対象の拡大と検査能力の拡充
感染者を早期に発見するため、症状の有無にかかわらず、検査前2週間以内に、感染判明者との接触があった方や感染リスクのある場所に滞在された方、また、勤務先や通学先、同居のご家族などに発熱等の有症状者がおられる方を検査の対象としています。さらに、クラスターの発生を防ぐため、医療従事者や福祉施設従事者も検査の対象としています。
また、ドライブスルー検査の導入や、発熱外来クリニックの開設、発熱外来認定制度の創設などにより、検査能力を拡充しています。
医療提供体制の見直し
感染判明者には全て病院や施設での治療・療養を受けていただくという方針のもと、新規感染判明者の増加に対応できるようコロナ専用病床や宿泊療養施設の確保に努めてきました。
引き続いて第2波、第3波への備えをしつつ、通常医療を安心して受けられるよう、感染小康状態においてはコロナ専用病床を一部縮小するなど、通常医療の機能を回復させます。
これからの奈良県
県内における新規感染判明者は、これまでの県民の皆さまの外出自粛へのご理解、事業者の休業要請へのご協力のおかげで低水準にあります。
今後も現状をしっかりと分析したうえで、フェーズ(状況)を適切に判断し、感染拡大防止に取り組みます。
研究の最前線
コロナウイルスとは
コロナウイルス
コロナウイルスは、熱、咳、くしゃみなどを引き起こします。
新型コロナウイルスでは、感染しても症状が出ないこともありますが、持病のある人や高齢者が感染すると重症化しやすく、注意が必要です。
ウイルスとは・・・
細菌よりも小さく、生物のような細胞を持っていません。 他の生物の細胞を利用して増殖します。
コロナウイルス
コロナウイルスには多くの種類があります。そのうち7種類がヒトに感染するといわれ、SARSやMERSも含まれます。
SARS(サーズ)
重症急性呼吸器症候群
MERS(マーズ)
中東呼吸器症候群
COVID(コビッド)-19
新型コロナウイルス感染症
日常生活で気をつけること
飛沫(ひまつ)感染や接触感染に注意が必要です。
手洗い・咳エチケット・マスクの着用などでうつらない・うつさない行動を心掛けましょう。
手洗い
くしゃみ
マスク
正しく知り、正しく恐れる
笠原 病院教授
県立医科大学県立医科大学附属病院
笠原 病院教授
(感染症センター長)
大学での研究
 県立医科大学では、新型コロナウイルス感染症をさまざまな角度から研究しています。このウイルスによるヒトの免疫の変化や、感染症の病態を解明し、最適な治療を見出そうとしています。
 臨床研究では、どの薬が実際に効果があるのかを調べています。また、基礎研究では、オゾンを使った新型コロナウイルスの不活化(感染性を失わせること)にも成功しました
オゾン実験のようす
オゾン実験のようす
奈良医大、そして奈良県の医療
 附属病院は、高度な医療を提供する県内唯一の特定機能病院です。病院内の対策本部で検討・決定された内容はオンラインで全職員と共有し、同じ目標に一丸となって向かっています。
 県と意見交換を行い、県の方針には我々医療従事者の考えが取り入れられています。他病院とも、患者の受け入れや対応について情報共有を行っています。
 行政機関や病院同士の緊密な連携により、奈良県の医療体制は、全国でもトップクラスという自負を持っています。
あふれる情報に惑わされず、正しく恐れる
 このウイルスは、症状が出ない人もいれば、急速に重症化する人もいる「得体の知れなさ」があります。しかし、どうすれば感染が広がり、また、どうすれば抑え込めるかということが明確になってきています。そのため、第2波が来ても適切に対応することができるはずです。過度に怖がらず、正しい情報をもとに正しく行動しましょう。
PCR検査の最前線
PCR検査とは
PCR(polymerase chain reaction)とは、ポリメラーゼ連鎖反応のことで、ポリメラーゼという酵素により極めて微量な特定の遺伝子が大量に増える反応を指します。
新型コロナウイルスのPCR検査では、検体(痰(たん)、鼻・喉のぬぐい液)中からウイルスの遺伝子を取り出し、特殊な試薬等により特定の遺伝子を増やし、増加状況で判定しています。
検体採取までの流れ
検体採取までの流れ
西和医療センター発熱外来クリニック オープン
診察のようす
 5月27日、奈良県西和医療センター内に、発熱外来クリニックがオープンしました。
 これまで西和医療センターでは、新型コロナウイルスに感染した疑いのある人の診察を、1日に最大5人程度行っていましたが、発熱外来クリニックの設置により、1日に最大24人程度に拡大することができました。
 一般外来と動線を分けるため独立した建物を設置し、建物内に4つの診察室、2つの処置室を備えており、レントゲン検査も可能です。
 受診は完全予約制で、県の帰国者・接触者相談センター(電話番号は上記)への連絡が必要です。
処置室
診察室・処置室
PCR検査の流れ
感染力をなくす処理
検体からウイルスの遺伝子を取り出し、感染力をなくす処理(前処理)を行う。
特殊な試薬を調製
ウイルスの特定の遺伝子を増やす特殊な試薬を調製する。
遺伝子1と、調製した試薬2を混合
ウイルスの遺伝子1と、調製した試薬2を混合させる。
リアルタイムPCR装置
リアルタイムPCR装置にセットし、特定の遺伝子の増加状況で判定する。
PCR検査の現場から
堀 所長
県保健研究センター
堀 所長
県保健研究センターについて
 当センターは、感染症や食中毒などの原因物質を調べる緊急検査、食品中の添加物・残留農薬・細菌等の検査や研究を行う県の機関です。検査結果は、県が実施する感染症まん延防止対策や食品等の安全性確認等に活用されています。
 新型コロナウイルス感染症では、県内の医療機関などから持ち込まれた検体のPCR検査も行っています。
設備とスタッフに求められるもの
 感染力の強いウイルスを扱うため、ウイルスが外に出ない部屋(高度安全実験室)で、N-95マスクや防護服を着用し、安全キャビネットという設備の中で前処理の主な作業をします。
 試薬の調製や混合の作業では、PCR(ポリメラーゼ連鎖反応)を阻害するあらゆる遺伝子や物質の混入にも細心の注意を払いながら、直径数㎜の容器に、数μl(マイクロリットル)(1μlは1mlの千分の1)の試料や試薬を量り採ります。スタッフには、精密で正確な操作と集中力の持続、感染に関する知識などが求められます。
今後に備えて
 1回の検査には約5時間かかります。検査に必要な試薬の調製や検体の処理などを手作業で行う必要があるためです。新型コロナウイルスのPCR検査を始めた2月6日は1日最大24件でしたが、検査体制の整備などを進め、4月20日からは1日最大60件の検査が可能になりました。
 今後、PCR検査の件数が増えることも想定し、検査体制のさらなる強化を目指しています。
医療現場の最前線
これからも気を緩めることなく
菊池 院長
県総合医療センター
菊池 院長
対策のきっかけ
 1月に中国で新型コロナウイルスの大規模な感染の報告があり、すぐに具体的な対応について検討を始めました。既存の新型インフルエンザ対応マニュアルを参考に、独自のマニュアルを作成し、今も随時更新しています。
 初の国内感染者が奈良県で確認されてからは、危機感が一気に増しました。4月には当センターと県立医科大学が新型コロナウイルス感染症重点医療機関に指定されました。さまざまな対策を病院全体で行うため、病院内に対策本部と対策会議を立ち上げ、病院全体で対応しています。
新型コロナウイルスと闘うために
 当センターには、感染症専用外来と、ウイルスが病室から外へ出ない陰圧の感染症病床(6床)があります。重症者に使用する人工呼吸器や人工肺、集中治療を行うユニット(ICUやHCU)も整備され、新型コロナウイルスと闘うための機材、施設が整っています。しかし、機材や施設があっても、それらを使える専門知識や技術をもつスタッフがいないと治療は不可能です。当センターには感染症専門のスタッフがいます。医師、看護師をはじめとしたスタッフは感染リスクがある中で、懸命に治療に当たっています。
 機材、施設、人材がそろって初めて新型コロナウイルスと闘うことができます。
HCU
HCU
北和地区の基幹病院として
 当センターは、県北和地区の基幹病院としての役割もあります。新型コロナウイルス感染症の治療や感染症外来、ドライブスルー検査と並行して、救急医療や一般診療も行っているため、この両方をしっかりと行うことが当センターの使命だと考えています。
 ドライブスルー検査では、1人の診察・検体採取に数時間かかっていたものが10分程度に短縮され、大幅に効率化されました。
 さまざまな団体や企業から防護服やマスクの寄付もあり、スタッフの励みになっています。
ドライブスルー検査
ドライブスルー検査
これからの生活様式
 新規感染者の数からみて、第1波を越えたとは思いますが、気を緩めず、第2波、第3波に備えています。
 これからも新型コロナウイルスとの闘いは続きます。手指の消毒の徹底、咳エチケット、ソーシャルディスタンスを保って行動するなどの新しい生活様式で対応することが大切だと思います。
県総合医療センター
県総合医療センター
少しでも、不安をやわらげるために
〜奈良県総合医療センター 看護師のみなさんより〜
入念な準備と、実際の看護
 新型コロナウイルス感染症患者を受け入れる前に、病床までのルートの確認や対応のシミュレーションをスタッフで何度も行いました。この病気は、治療だけでなく感染拡大防止にも気をつける必要があります。実際に患者さんが入院されてからは、より一層、気を引き締めました。
 患者さんの体勢を変えるだけでも、通常の倍以上にあたる5人程度のスタッフが必要でした。防護服やマスクは暑く、息苦しく、つらいもので、容易に着脱することもできません。張り詰めた空気の中での看護は、心身共に想像以上の負担がありました。病院近くのホテルで寝泊まりし、家に帰らないスタッフもいました。
「チーム医療」で一丸となって
 患者さんと距離をとる必要があり、防護服越しでのコミュニケーションも難しく、お見舞いを受け付けることもできません。そんな中でも、「どうにかして患者さんの不安をやわらげたい」という気持ちがありました。みんなで話し合って、テレビ電話で家族の顔を見てコミュニケーションをとってもらう機会を設けたり、誕生日には看護師からの寄せ書きをしたメッセージカードを手渡しました。
 難しいことも多くありましたが、医師・看護師をはじめとした医療従事者が一丸となった「チーム医療」で対応することができました。
自分のため、みんなのために
 県民の皆さんが、自粛生活に耐えてくださったおかげで、新規感染者は減ってきています。我々スタッフは万全の体制で患者を受け入れる準備を整えています。しかし、この感染症は一人ひとりの「心掛け」で予防ができることも事実です。その心掛けが、自分の命だけでなく、周囲の人、大切な人の命を守ることにもつながります。長い闘いになりますが、共に頑張りましょう。
奈良県新型コロナウイルス感染症対策基金へのご寄付のお願い
県では、新型コロナウイルス感染症のまん延防止、患者の診療等に従事する医療従事者等の支援、その他新型コロナウイルス感染症対策に必要な施策の推進を図るため、基金を設置し、県民・事業者等の皆さまからの寄付を募っています。
金額に上限・下限はありません。いくらからでも寄付いただけます。
皆さまのご厚意が、最前線で闘っている医療従事者等の大きな励みとなります。
最前線で闘う医療従事者等や、奈良県の新型コロナウイルス感染症対策への応援をお願いします。
医療従事者
医療従事者
寄付の申込方法など、詳しくは下記へ。
※寄付の申込書は下記HPからダウンロードできます。
または、お電話やFAXなどでご連絡いただけましたら申込書を郵送いたします。
県福祉医療部企画管理室
電話 0742-27-8504
FAX 0742-26-1005
URL www.pref.nara.jp/item/227442.htm
新型コロナウイルスに関する最新の情報は、奈良県ホームページで確認いただけます。
URL www.pref.nara.jp
※「県民だより奈良」は県内の各家庭にお届けしています。
 市町村窓口、県の施設などにも配置しています。
※点字と声による「県民だより奈良」も発行していますので、必要な方は県広報広聴課へご連絡ください。
 県では、経費削減のために、「県民だより奈良」の裏表紙に有料広告を掲載しています。
 広告の申込・お問い合わせは、株式会社キョウエイアドインターナショナル大阪支社(TEL:06-4797-8251)まで

お問い合わせ

広報広聴課
〒 630-8501 奈良市登大路町30
報道係 TEL : 0742-27-8325
広報制作係 TEL : 0742-27-8326 / 
FAX : 0742-22-6904
デジタル広報係 TEL : 0742-27-8056
県民相談広聴係 TEL : 0742-27-8327
相談ならダイヤル TEL : 0742-27-1100

ナラプラスバナー
   ↑
スマホアプリ「ナラプラス」でも電子書籍版がご覧になれます。
詳しくはこちら

マチイロロゴ画像
   ↑
スマホアプリ「マチイロ」でも電子書籍版がご覧になれます。
詳しくはこちら