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輪作作物としてのエンバク
 ~エンバクをご存じですか~

 イネ科の一年草でマカラスムギと呼ばれることもありますが、じつはカラスムギは本種と近縁の雑草の名前です。高さ1メートル以上になり、原産地は中央アジア地域とされています。もともとは麦畑に生える野生のカラスムギが選抜されて,独立した作物となったと言われています。寒冷な気候を好み,ヨーロッパ北部、ロシア,アメリカなどで多く栽培されています。日本には明治初期に導入されました。寒地では4~5月に播種して8月に収穫,暖地では秋まきして翌年6~7月に収穫する作型が中心です。利用方法は食用、家畜の飼料用として用いられます。

 食用としてはオートミールが一般的です。エンバクをひき割りにしただけのものは固くておいしくありませんが、加熱加工したものに,水,牛乳を加え,かゆ状にしたものがオートミールです。そのほかにもコーンフレークのように加工してそのまま食べられる製品(シリアル)もあります。

 日本では食用としてそれほど用いられてきませんでしたが、輪作作物としてのエンバクが見直されてきています。輪作とは異なる種類の作物を順番に組み合わせて作付けすることにより、
(1)土壌の改善
(2)病害虫の発生抑制
(3)土壌流亡の防止
(4)雑草抑制     などの効果も期待できます。

 エンバクは秋から春にかけて生育できるので春夏作物の前作として好適で、雑草抑制効果もあります。さらにダイコンの前作として栽培するとダイコンのセンチュウ類の被害が減少することが知られています。農業技術センターではセンチュウ類に加えてダイコンの根を食害するキスジノミハムシの被害も軽減されることを発見しました。エンバクにキスジノミハムシが忌避する物質が含まれていることがわかり、現在分析を進めています。そのほか、土壌の微生物相が豊かになり、数種の病害に対する抑制効果も報告されています。エンバクの1アールあたりの種代は500円程度で、前述の効果が期待できるのなら安いものです。環境に優しい生産技術が求められている現在こそ、持続的な生産のための輪作技術の再検討が必要な時期ではないでしょうか。
2002.12
奈良県農業技術センター 高原農業振興センター 
総括研究員 中野智彦