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野菜作りと除草

 今、「無農薬野菜」がもてはやされています。でも、現代の豊かな食生活は、農薬の発達を抜きにしては考えられません。殺虫剤や殺菌剤は、世界中の農業革新の柱となりましたが、除草剤も日本の農業を大きく変えたといえるでしょう。

 家庭菜園を経験された方はお分かりと思いますが、暖かくて雨の多い日本では、雑草とたたかわねばなりません。「良農は草を見ずして草を取る。」といわれたほどです。乾燥地帯の多い外国の農業と、日本の農業が大きく違うところです。けれども戦後、魔法のように登場した除草剤は、農業機械のような大きな投資を必要としないで、真夏のあの草取りの重労働から日本中の農家を解放しました。

 ただし、奈良盆地周辺の宇陀郡や吉野郡の畑作地帯では、事情がだいぶ異なります。ここはホウレンソウをはじめキャベツやダイコンなど、いろいろな野菜の産地ですが、いまだに真夏の炎天下で、汗だくになりながらクワや手で草取りをしています。水田ではもう何十年も前に見られなくなった姿です。日本の除草剤が水稲を中心に開発され、水稲の生育中に雑草だけを枯らす効果的な除草剤が多く出現したためです。

 一方、野菜栽培では、水田に比べ雑草の種類が多いこともあり、野菜以外の雑草を枯らす除草剤(選択的除草剤)の種類が少ないのが現状です。たとえば、アブラナ科のキャベツ畑で使う除草剤では、同じアブラナ科の雑草(ナズナなど)が、枯れずに残ります。

 除草剤にたよらぬ方法として、ポリエチレンフィルムなどで地面を覆う技術も、野菜の種類によっては広く普及しました。家庭園芸でもよく使われますが、黒色のフィルムを使います。透明では、光が通って暖かいので、雑草が大喜びで生えてきます。

 プラスチックフィルムの一大欠点は、土の中でいつまでも分解せず厄介なものとなることです。そこで最近では、土中の微生物や光によってしだいに分解される性質のフィルムも開発されはじめ、無公害の技術素材として期待されています。



1998年4月

奈良県農業試験場 高原分場 総括研究員 杉本好弘