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奈良イチゴ親株のふるさと

奈良県のイチゴの生産量は5千7百t、生産額は46億円で全国有数のイチゴ産地です。皆さんも店頭で奈良産のイチゴを見かけたり購入されることが多いかと思います。
 ところで、イチゴの苗の増やしかたをご存知でしょうか。栽培品種のイチゴは栄養繁殖で増やします。栄養繁殖というのは種を播くのではなく、親株の組織の一部から直接苗をとることをいいます。挿し木や接ぎ木などが代表的な方法ですが、イチゴでは匍匐枝(ランナー)と呼ばれるつるの先に親株と同じような形の子株ができますので、これを次の苗にします。

 さて、イチゴにとって最も恐ろしい病気に萎黄(いおう)病、ウイルス病があります。昭和40年代に産地で発生し甚大な被害を受けました。これらの病気はランナーを通して親株から子株へと伝染します。いったんかかってしまうと治療する方法がありませんので予防が大切です。病気にかからないためには、まず無病の株を親株とすることが必要となります。

 高原農業振興センターでは病気にかかっていない優良なイチゴ苗を生産しています。 これらの無病苗から県内の農協でさらに子苗をつくり、生産者へ親株として配布しています。昭和50年に奈良県と奈良県農協および生産者の協力のもとで奈良県いちご優良親苗増殖協議会が発足して以来、この配布事業は今日まで続いており、県内のイチゴの安定生産に役立っています。
 無病苗を生産する施設は厳重な対策がとられています。ウイルスはアブラムシが伝搬し、萎黄病は土の中などに存在するカビの1種により引き起こされます。アブラムシの飛来を防ぐために温室はネットで被覆され、出入り口は2重のドアで仕切られています。外部の土壌の持ち込みを防ぐため、作業時の履き物は専用の長靴を用い、入室のたびに消毒液で長靴を洗浄します。こうして無病の苗は、害虫や病気がつかないように手塩にかけて育てられます。つまり、高原農業振興センターは奈良イチゴの親株のふるさとであるといえるでしょう。

2001年4月
奈良県農業技術センター 高原農業振興センター 
営農技術チーム 主任研究員 中野智彦