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イチゴの高設栽培

高設栽培とは聞き慣れない言葉ですが、読んで字のとおり、イチゴを高い場所に植えて栽培することです。土を入れたポットやプランターにイチゴを植え、棚に載せただけでも立派な高設栽培ですが、数千平方メートルの圃場で数万株ものイチゴを栽培する農家の場合、重たい土を使っていては体がもちません。実際の高設栽培では、鉄パイプなどで作った簡単なベンチの上に発泡スチロールやポリフィルム製の枠を載せ、ピートモスなどの軽い培地(土の代わりになるもの)を詰めてイチゴを植えます。高さは一メートル前後、肘を軽く曲げた状態で歩きながら収穫作業ができる高さです。

この高設栽培は、現在県下で約三ヘクタール。まだ全体の二パーセントほどですが、今後もますます増えようとしています。高設化によるメリットはいろいろありますが、導入の最大の目的は、やはり楽に栽培ができるということに尽きるでしょう。

「この不況のご時勢、設備費用も馬鹿にならないのに楽に作業できるからなんて」という声も聞こえてきそうですが、実際の収穫作業を見れば納得できるはず。イチゴ農家は毎日四百?八百メートルもの距離を、重い収穫箱を手に、屈みながらひとつひとつ果実を収穫して歩くのです。促成栽培の場合、この作業は半年も続きます。もちろん、収穫だけでなく、古葉かきなどの管理作業も同じ姿勢です。多くのイチゴ生産者が足や腰に故障を抱えており、過酷な作業を嫌ってか、若い後継者はほとんど見あたらないのが現状なのです。

輸入の急増など、国際化の荒波に直面して、農家の意識も変わりつつあります。コスト削減は当然ですが、単に出費を惜しむのではなく、最小限の投資をして労働環境を近代化することが、生産性を高めることにつながるはず。余裕あるイチゴ作りをめざして高設栽培に転換する、比較的高齢な生産者の姿を見て、イチゴ栽培を始めたいと農業技術センターを訪れる、他産業からの新たな就農者が増えています。
2002.2
奈良県農業技術センター 生産技術担当
野菜栽培チーム 総括研究員 信岡 尚