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野菜の接ぎ木

 冬は、農家や育苗業者のビニールハウスで春植え野菜の育苗が始まる季節。苗の期間が長いトマトやナスなどの果菜類(果実を利用する野菜)は、とりわけ早くから準備にかかります。

 ところで、暖かくなって園芸店の店先に並ぶこれらの苗に、接ぎ木苗と自根(じこん)苗の区別があるのはご存じですね。接ぎ木とは図のように、2つの植物体をつなぎ合わせて、全く新しい別の植物体を作り出すこと。接ぎ木植物は、あたかも一つの植物体のように生育しますが、接いだ部分を境に別々の植物で、性質も異なります。

 いろいろある接ぎ木の利点のうち、もっとも一般的なのが土壌病害の予防でしょう。味や収量を最優先して育成された現在の野菜品種は、反面、病害に弱い場合が多いのですが、病気に強い近縁野生種などの遺伝子を取り込もうとすると、味や収量まで落ちてしまいます。そこで、たとえば病気に強いトマトの野生種を台木にして、その上に味の良いトマト品種を接ぎ木すると、味が良くて病気に強いトマトが、簡単に作り出せるというわけです。穂木と台木の組み合わせによってはこの他にも、生育が良くなる、耐寒性が高まる、収量が多くなるなど、さまざまな利点があります。

 接ぎ木部分の上と下では別々の植物なので、境から下、台木部分のわき芽を伸ばしてやると、伸びた枝は元の台木品種そのものの性質を表します。夏の終わり頃、「ナスの木にトマトの赤い実が成った」と驚きの電話を毎年のように受けるのですが、これはナスの台木に使ったアカナスの芽が伸びて実をつけたもの。トマトを扁平にしたような鮮やかな橙色の実ですが、食用には適しません。キュウリの台木の芽を取らずに放置しておくと、カボチャの実が成ったりします。

 逆に、接ぎ木部より上の穂木から伸びた根が地中に入ってしまうこともあります。この場合は、穂木の根を伝って地中の病原菌が侵入し、作物が枯れてしまうこともあり、せっかく接ぎ木苗を使った意味がなくなってしまいます。トマトやナスの接ぎ木苗では、地際から2?3cm上で接ぎ木部分が小さくふくらんでいます。ここが土で覆われると穂木の根が出てくるので、深植えは禁物。ウリ類は子葉の付近で接ぎ木します。いずれも、子葉付近から出るわき芽は、早めに取り除いておくのが良いでしょう。
 ナスの接ぎ木苗
やさしい果菜の接ぎ木(家の光協会)より
2003.12
奈良県農業技術センター 野菜栽培チーム 
総括研究員 信岡 尚