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常温貯蔵が可能で不良環境・病害虫に強い
スーパーセル苗の開発

 現在、キャベツ、レタス、ハクサイなどの葉菜類の多くはセル成形苗を畑に移植して栽培されています。セル成形苗とはタコ焼きの鉄板、あるいは卵のパックのような小さな穴(セル)があいたプラスチック製のトレイに、育苗用土を詰めて育てた苗のことです。
 葉菜類のセル成形苗は、機械移植を前提として、省スペース・大量育苗が可能であり、輸送が容易であるなどの理由で、育苗の省力化や分業化の中心技術として広く普及してきました。しかし、セル成形苗は1セルあたりの土の量が少ないため、
1.育苗期や定植直後の環境変化に弱い。
2.降雨等によって定植が遅れると苗が徒長して移植機の利用が困難になる。
などの問題があります。
葉菜類のセル成型苗の徒長回避や苗貯蔵に関する研究は、物理的刺激を与える方法、低温貯蔵、生育調節剤による方法などが研究されてきましたが、経費面、労力面から実用化には至っていません。ところが、徳島県立農林水産総合技術センターが、一定の大きさまで育てたブロッコリーのセル成型苗に肥料を与えず、水やりだけで管理することによって、定植可能な状態で長期にわたり常温で貯蔵が可能であることを発見し、これを「スーパーセル苗」と名付けました。この苗を定植すると初期生育が若干遅れるますが、その遅れは4日から10日程度で、栽培期間さえ延長すれば最終的な収量、品質に大きな低下は見られません。また、乾燥や病害虫にも強い傾向がみられます。
 このたび農林水産省の「先端技術を活用した農林水産研究高度化事業」の採択を受け、奈良県農業技術センターでは本年度から3年間、徳島農技センターを中心として、大阪府立大学、近畿中国四国農業研究センターおよび竹内園芸(徳島県内の苗生産業)と「スーパーセル苗」の実用化へ向けた共同研究を実施することになりました。
 この苗の問題点としては、育苗期間が延びるので、当然育苗する施設の回転率が下がります。いかに短い日数でスーパーセル苗としての性質を持った苗に仕上げることができるかが、実用化へのポイントとなります。そのために、なぜ不良環境に強くなるか生理生態的な機構、病害虫に対して強くなるメカニズムを明らかにしていくことが必要となります。さらに、多くの品目や広い地域で利用できる技術として組み立てていかなければなりません。
 このような研究成果により、育苗業者は季節的な需要集中に対応できる効率的な育苗が可能になるとともに、信頼性の高いセル苗生産が可能となります。また、生産者は不良環境や病害虫に強い苗を使用でき、移植後の栽培管理のリスクが軽減することにより、安定した生産が可能となります。
 これまでは、「老化苗」として忌み嫌われていたセル苗が、実は不良環境や病害虫に強い底力を持った「スーパーセル苗」として脚光を浴びようとしています。


2004年10月 高原農業振興センター
総括研究員 中野智彦