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「アスカルビー」のDNA鑑定

イチゴ品種「アスカルビー」は奈良県農業技術センターで育成され、平成十二年に品種登録されて県内で最も広く生産、流通しています。奈良県が「アスカルビー」を品種登録したことで、その権利は、県の財産として種苗法によって保護されています。

ところが、平成十四年に県と苗の利用者との間で交わした契約に違反し、不正に苗を輸出する事件が発生しました。これは断じて許し難い行為です。今後このような事件から育成者の権利を守るため、品種を正しく識別する必要があります。しかし、イチゴの場合、葉や果実等の外見で品種を正しく識別することは極めて困難です。そこで、より正確な識別法として、イチゴの葉から採取したDNAを鑑定する方法があります。DNAには生物の形態や性質を決定する暗号が仕組まれています。すなわち、異なる生物種あるいは同じ生物種でも品種が異なれば、その暗号も異なります。品種識別の為のDNA鑑定では、同じ生物種同士の異なる品種間の僅かなDNAの差異を見分けることができます。本センターでは、こういった手法による「アスカルビー」を識別する為のDNA鑑定技術を開発したので、簡単に説明します。

まず、鑑定したいイチゴの葉からDNAを採取します。この時の葉は1枚あれば十分です。次に、イチゴのDNAに何種類もの試薬を混ぜ、DNA増幅装置を使ってその一部分を増幅させます(PCR法)。この時、品種によっては増幅されないものがあります。増幅されたか否かを確認するために、増幅したDNAの断片を分離します。そこで、寒天の主成分であるアガロースをゲル状に固めたものを使ってDNA水溶液に電気をかけます(電気泳動)。そうすると、写真に見られるように断片の大きさに違いによって、ゲル内で上下に分離されます。本センターの方法では、3ヶ所の特定の部分を一度に増幅したものを分離します。「アスカルビー」(図中のレーン1)では1ヶ所でしか増幅されていないため、白線(バンド)は1本だけ見えます。ところが、他の品種では2?3本のバンドが見られます。このようにして「アスカルビー」を特定することができます。また、この技術は葉だけではなく、果実についているガク片を材料にすることもできます。

上記手法を用いることによって、国内外のイチゴの主要な23品種および「アスカルビー」の兄弟系統を「アスカルビー」と識別することが可能になりました。こうして、奈良の赤い宝石と称される「アスカルビー」の確かな特性は今後も保たれていくことでしょう。


2005年11月
農業技術センター
資源開発チーム 技師 野村貴浩