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トルコギキョウの話

トルコギキョウという名前の花をご存知でしょうか。昭和50年代後半に豊富な色彩の新品種が続々と出現しだしたのをきっかけに、昭和60年代から現在にかけて花の業界で一躍ブームをまきおこしました。当時、日本の切り花の御三家といわれていた「キク」、「バラ」、「カーネーション」につぐ「第4の花」になるのではといわれるほどの勢いで、日本中に広がっていきました。ずっと以前から日本に導入されていて、山下二幸園(旧-奈良県大和高田町)の昭和8年のカタログにはリシアンサスとして、また昭和9年の坂田商会(現-(株)サカタのタネ)のカタログには、トルコギキョウの名前で掲載されています。

 「トルコギキョウ」という名前を聞いただけでは、トルコ原産のキキョウの仲間かと勘違いする人も少なくないと思われますが、実は北アメリカからメキシコ北部あたりの原産で、リンドウ科のユーストマ属に分類されます。 もともとは、初夏から秋にかけて咲く「夏の花」でしたが、今では育苗及び栽培技術の発達によりほぼ周年にわたって花屋さんでみかけるようになりました。普通、9月中旬~10月上旬に種をまいて育てると翌年の7月頃に花が咲いてきますが、種子が非常に細かく、初期の生育が遅いこともあり、苗ができるまでの温度・水・光の管理が難しい花でもあります。苗の生育適温は、昼間25℃前後、夜間は15~20℃で、温度などの条件が悪いと順調に生育せず、茎が伸びずに葉と葉の間がつまったタンポポのような形(ロゼット状)になる、やっかいな性質を持っています。

 こんな気難しい一面を持つトルコギキョウですが、他の花々が比較的花持ちしにくい真夏でも日持ち・水揚げが良く、しかも花色が豊富といったことから、花束やフラワーアレンジをはじめ、最近ではホームユース用、仏花用として幅広く利用され、重宝されている人気者の花でもあります。このトルコギキョウの育種が世界に先駆けて日本で進み、豊富な色合いの品種が多数作出され、ヨーロッパ・アメリカからも非常に注目されています。新しい植物はともすれば外国から輸入されることが多い昨今、日本の育種が世界をリードした数少ない植物といえるでしょう。今後、世界的にますます需要が増えるものと思われます。

1998年2月

奈良県農業試験場 栽培技術担当 花卉栽培チーム
研究員 藤井祐子