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菜の花

「菜の花」とアブラナ科栽培植物の花を総称して呼ぶことがあります。この意味ではブロッコリーもカリフラワーも菜の花と言えますが、菜の花と言えば、やはり思い浮かぶのは一般にナタネとも呼ばれるアブラナの花でしょう。

 アブラナは地中海沿岸で栽培化され、平安時代には中国・朝鮮半島から日本へ渡来したようです。アブラナの種子から油をとり始めた時代については、平安時代もしくは室町時代末期とする説がありますが、昔はその油をおもに燈火として利用してきました。明治時代にドイツより収量の多いセイヨウアブラナが導入され栽培面積が急激に増えましたが、昭和30年頃をピークに減少し続けています。その原因のひとつに、食用油の良質な成分とされるリノール酸とオレイン酸が比較的少ないことが上げられます。アブラナは種子から油をとるだけでなく、花蕾に葉を少し付けたものを塩漬けなどにして和食の食膳に色を添えることもできます。これをナタネナまたはタネサキと呼んでいます。食用にはふつう在来のアブラナを使います。アブラナの種は赤褐色、セイヨウアブラナは黒色で、播種時に区別できます。

 花蕾を食用とするアブラナ科野菜にナバナと呼ばれるものがあり、漢字で菜花と書きます。収穫はナタネナと同様に、手で花蕾に葉をつけて長さ15cmほどで折ります。ナバナは切り花としても利用でき、その時はハナナと呼びます。切り花には花蕾が1~2輪咲いた頃に収穫します。ナバナ・ハナナはハクサイを品種改良したものでアブラナとは区別されます。種苗業者は分枝の多いものをナバナ用に、また、分枝の少ないものをハナナ用として売っているようです。

 近年、河川の堤防などに菜の花の大群を見かけます。そのほとんどはセイヨウカラシナで、ロシアで栽培されていたクロガラシが野生化したものと言われています。クロガラシの種子からはマスタードを、日本で栽培されているカラシナの種子からはカラシを採ることができ、その利用方法も確立されています。とくに、セイヨウカラシナの種子は刺激性分が強く、漢方では外用貼布薬として利用されるほどですから、花蕾や若葉は漬け物などにして食べられますが、種子は口に入れないほうがよいでしょう。

1999年2月

奈良県農業試験場 高原分場 主任研究員 谷川賢剛