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花の香り

 もう一昔前になりますが、「シクラメンのかおり」という歌が大ヒットしたことがあります。この曲を聞くとなんとなくあの淡い香りを連想される方も多いのではないでしょうか。シクラメンだけでなく、初春のジンチョウゲ、スイセン、春のバラ、夏のユリ、ジャスミン、秋のキンモクセイなど四季を通じて香りを届けてくれます。

 植物にとってみると、香りを発散させることにより、昆虫などを引き寄せ大切な受粉を助けてもらっています。スミレ、バラ、クチナシ、スズランなどがその代表的なものです。不思議なことにどれ一つとっても同じ香りのものはなく、私達人間にはまったく感じられない花の香りでも、するどい臭覚をもった昆虫たちにはそれぞれの花特有の香りをかぎわけて、自分の好む花を識別することができます。

 花の芳香成分はおもに花びらの表面組織に多く含まれる芳香油とよばれる物質がもとになっています。この芳香油はどこでどのようにつくられているのか、よくわかっていません。ある期間にわたり貯蔵され、必要に応じて酵素の働きにより溶解され、はじめて空気中に香りとして発散されるといわれています。

 花の香りの強弱は種類、品種による差があり、ミツバチなどの虫により花粉が運ばれるサクラ、スミレなどに比べ、おもに風や鳥によって花粉が運ばれるスギ、ツバキ、ビワなどの種類はほとんど香りがありません。品種では、バラを例にとると、香りの強い品種としてミスターリンカーン、ブルームーン、パパメイアンなどがあげられます。
 
 香りの強さは開花状態、時間などによっても異なります。一般的に、咲いている花より咲く寸前の花の方が、熱帯育ちの花より温帯育ちの花の方が、夜間より日中の方が花の香りが強いといわれています。 花の香りを導入する育種は今後の大きな課題になるでしょう。

奈良農業試験場 総括研究員 佐々木 茂

ほのかな香りを漂わせるササユリの花