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最近の花卉生産事情

 わが国の花卉生産はバブルの崩壊にもかかわらず、平成5年度には6千億円を越えて順調に推移している。これは農業総生産の約5%にのぼる。この結果、わが国の国民一人当たりの消費額は世界のトップレベルにまで生長している。しかし、取り巻く状況はけっしてバラ色だけではなく、今後に残された問題点も多い。

 まず、農業一般のなかで例外的に成長を続けてきた分野として注目を浴びており、他分野からの参入がみられる。今後の需要の動向如何によって、受け入れることのできる能力も変化するが、他分野からの転換、また海外からの輸入を考えると、消費量は増加するものの販売価格の上昇は見込めず、かえって低下傾向に拍車がかかるものとみられる。現に花卉産物のどれを捉えても、価格は相対的には着実に低下しつつある。

 国内各地では花卉を対象にした基盤整備が進んでおり、今後の競争は激化する傾向にある。加えて海外からの輸入は増加する見込みで、これは畜産製品、野菜にもみられるところである。現在は南方からのラン類など、オランダからの球根、およびその切花などがその中心であるが、バラ、カーネーションを始め諸々の切花の輸入が行われつつあり、しかも生産地も多様化しつつある。今後発展途上国での産地形成が進むものとみられ、輸入品、即高級品という図式にも変化が生じる可能性がある。

 また現在の花卉生産の内訳をみると依然切花ギクの比率が高く、これが全体的な価格形成に大きく影響している。しかもキクは露地ものが多く、気候に影響されやすい。また作付け面積も市況によって変動しやすく、わが国の市場価格が欧米に比べて不安定である一因になっている。

 このように概観してくると、わが国の花卉産業が未だ流動的な状況下にあることが明らかになってくる。アメリカではすでに切花の多くは海外からの輸入に依存しており、国内生産が有利な花壇苗、鉢物の大規模生産にシフトされている。一方、オランダを中心としたヨーロッパでは、基盤整備の充実とコストダウンによって生き残り策が進んでいる。ただし航空網の発達によって流通網は徐々に変化しており、アフリカなどに新しい産地が形成されつつある。わが国の周辺には花卉生産が未発達である発展途上国が多く、しかもそれらは豊富な労働力にめぐまれている。今わが国の花卉産業も、このような周辺環境に確実に影響されるものとみられる。

 一方、わが県のような大消費地近郊の産地では、新鮮さがとりえになるような切花、また最近の市場の大規模化と一見矛盾することにはなるが、少量多品目が残された一方向であるかも知れない。また、すでに全国第5位である花壇苗が示すように、輸送性が大きなポイントになり、また機械による省力が容易で、かつ雇用機会の多い地域ほど成立しやすい分野での可能性は高いと考えてよい。ただし、この分野でも今後産地間競争の激化は不可避であろう。