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垂れ下げ布によるハンギングバスケットの過湿害回避

 ハンギングバスケットは空中に吊り下げられるために、鉢底から流出する水分が少なくなる現象がある。これは鉢の下側にある空気によって培養土の底で毛細管が切れるために生じる。

 この結果、ハンギングバスケットでは培養土の保水量が高くなり、余剰に水分が保持されやすい。

 ハンギングバスケットは軒下やインテリア用に使われることもあるが、屋外で利用される場合も多く、この場合、降雨によって過湿害が生じやすい。特に培養土の下層部では多くの水分を含み、部分的な過湿害が起こる。

 この現象を軽減するために鉢底より不織布を垂れ下げ、毛細管を長くした場合の排水状態を調べた。用いた繊維は市販のポリエステル製品で底面給水用の粗いもの、および眼鏡拭きなどに用いられる高密度繊維の2種類で、いずれも幅1cmに調整した。垂れ下げた長さを変えて、100mlの容器から流出した水分を測定した結果が図に示されている。粗い不織布による水分の排出は高密度繊維による排出よりすみやかであった。しかし、約1時間後には排出は止まった。一方、高密度繊維では約3時間後でも水分の排出が続いていた。また、垂れ下げが長さほど排水量が多くなる傾向がみられた。

 この結果は、粗い毛細管の方が水分の移動が速いものの、毛細管に影響される水分が少なくなることを示している。垂れ下げが長いほど水分減少が大きい原因には、単に毛管切断位置が下がるだけでなく、垂れ下げた不織布の乾燥も加わっていたようである。実際の利用場面ではすみやかな排水が効果的であり、この粗い不織布で十分対応できるものとみられた。また、垂れ下げる長さは、この不織布の毛細管による揚水の高さに近い10cmで十分であると考えられた。 

 この不織布を用いて、実際にハンギングバスケット(21cm径)で四季咲きベゴニアを栽培した。培養土の位置別の環境ををみるために、プラグ苗を鉢底から高さ別に差し込んで栽培した(表)。その結果、培養土の種類にかかわらず、不織布を垂れ下げた方が生育が旺盛になり、不織布の垂れ下げによる排水と、過湿害の回避を実証することができた。

 このように垂れ下げ布を付けることによって、ハンギングバスケットに十分潅水しても安定した生育が維持されることが明らかになった。これは自動給水を容易にするだけでなく、特に屋外での植物のメンテナンスを効果的にするものと期待される。


奈良県農業試験場 栽培課 長村智司