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鉢物・苗物の品質について

 最近花の生産物では、観賞時に持ちのよいことが重要な品質であるという考えが一般的になりつつあります。これは当たり前のことなのですが、もともと商品価値のひとつとして、購入時にきれいでなければならないことが重要視されてきた傾向があります。これもまた一方の事実です。しかし、家庭で利用したり、花壇苗のように植えてからよくなることが重要な製品では、品質とは持ちがよいことである、といってよいでしょう。また、流通段階、例えばトラックの内や店頭での損傷もできるだけ避けたいものです。

 ここで思い出されるのが「ノジがある」という言葉です。これは大和地方の方言で、粘りがあるとか、しぶといとかいう意味ですが、なかなか趣のある言葉ではないでしょうか。この「ノジがある」という性質を得るためには次のような技術が成り立ちます。

 まず、花が長持ちするためには色々な薬剤処理が可能です。これは簡単な技術に属します。次に、販売する前、つまり生産の後半より、植物をしまりのよい形質に変えるために風を十分当てたり、水を少なくする方法があります。

 次に興味深いのは、植物をよい環境で作るのではなく、ある程度ストレスを与える、つまりすみやかな生育をしないように制限する方法です。例えば水もそうですが、肥料を少なくします。また、光を十分与えずにある程度馴らしておき、観賞時に光不足になっても抵抗力を増すように育てることです。このような技術は従来より知られていたところで、肥料を少なくすると病害虫に対する抵抗性も増します。肥料が少ないと虫もおいしくないのでしょう。光の制限については観葉植物や針葉樹(コニファー)類でよく知られた技術で、今後多くの植物に利用されるかも知れません。

 苗作りでも同様で、ある程度生育を制限した方が後の生育がよくなったり、悪い環境にも適応しやすくなることが多いようです。ただし、あまり悪い環境に置き過ぎるといじけてしまって、なかなか素直に生育しません。

 適度なストレスが後のバネ、「ノジ」を作ると考えると、植物もなかなか示唆に富んでいるといえるのではないでしょうか。


奈良農業技術センター 長村智司