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キクの品種

 奈良県は全国第7位(2000年)の切花キク産地です。平群町を主とする小ギクで約250品種、新庄・当麻・下市3町を主とする輪ギクで約200品種もの栽培が行われています。しかも毎年いくつもの品種が導入され、消費者の好みにあわせて、年々品種は入れ替わっています。

 これらの品種は春から晩秋まで順次、開花・出荷できるように、組み合わせて栽培されます。開花する時期によって、夏ギク、夏秋ギク、秋ギク、寒ギクの4種類に分けられ、生育や栽培法が異なります。このように開花期ごとに色合いと花の形が異なる品種を組み合わせていくと、200~300という品種数が必要となってくるのです。こうした多品種生産は奈良県のキク生産の大きな特徴です。全国的には白の一輪ギクを中心に、少数の品種を光や温度の制御によって栽培するのが主流となっています。これは白の一輪ギクの主な用途が葬祭の業務用であり、同じ品質で長期間出荷されることが必要なためです。それに対し個人向けに出荷するときは、花や葉の色、形などの選択肢が多いということが大切になります。多品種生産は、こうした個人消費を対象とした生産といえるでしょう。

 ところで皆さんは、この数年でキクの品種が大きく変わったことにお気づきでしょうか。ほんの1,2年前までは、白の一輪ギクは「精雲(せいうん)」、「秀芳の力(しゅうほうのちから)」の2品種がほとんどでした。しかし今日では、「岩の白扇(いわのはくせん)」、「神馬(じんば)」、「精興の誠(せいこうのまこと)」の3品種にほぼ入れ替わっています。これら新品種は花びらの外側も純白で、以前の品種が蕾の時は少し黄色味がかっていたのと異なります。こうした商品上の長所とともに、「岩の白扇」は生産上の大きな長所として、わき芽が非常に少ない性質を持っています。こうした性質を持つ品種を無側枝性ギクといいます。一輪ギクを生産する上では、余分なわき芽を摘み取り、花を一輪にする「芽かき」という作業が欠かせません。しかし岩の白扇に代表される芽なしギクは「芽かき」作業が大きく省力化できます。無側枝性ギクは「岩の白扇」だけでなく、県内で生産の多い赤や黄色の品種でも数多く導入されてきています。

 見慣れたはずの切花ギクも、改めて花色や葉の形、わき芽の様子に注意して見てみれば、店頭に並ぶキクを選ぶのが楽しくなりませんか?

2002.10
奈良県農業技術センター 生産技術担当 花卉栽培チーム 
主任研究員 仲 照史