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スプレーギクのはなし

 9月はお彼岸があり、奈良県のキク生産量が最も多い月です。皆さんは「キク」というと、どんな花を思い浮かべるでしょうか。お葬式に使う花、お墓にお供えする花など少し地味なイメージがあるのではないでしょうか。しかし、キクにもいろいろな種類があります。欧米で品種改良されたスプレーギクは地味な日本古来のキクとは全く違った華やかさを持っています。

 「スプレー」とは「(花や実をつけた)小枝」という意味があり、キクだけでなくバラやカーネーションでも多輪咲きの品種を指します。キクは中国が原産といわれており、欧米に渡ったのは江戸時代のことです。はじめは日本からオランダへ持ち込まれ、続いて中国からも渡りました。のちにアメリカにも伝えられ、欧米での品種改良が進みました。それが日本に逆輸入されてきたのです。

 性質的に小ギクとのはっきりした違いはないのですが、基本的に赤、白、黄の3色しかない小ギクに比べ色目が豊富で華やかな品種が多く、ひとつの花弁に2つの色がつく複色や最近ではグリーンの花も登場しています。花形もマリのようなポンポン咲きやアネモネ咲き、細長い花弁のスパイダー咲きなど、葉を見ないとキクとわからないようなものもあります。
 花の大きさは小輪だけでなく中輪の品種も多くあり、小ギクに比べて豪華な雰囲気をもっています。

 また、花のつき方も小ギクとは若干違います。小ギクは側枝が伸びて頂花とほぼ同じか高い位置で花が咲き、上部のボリュームの大きな逆三角形型の姿をしています。それに対してスプレーギクは頂花が一番上に咲き、二番花、三番花と段々に下がっていくクリスマスツリーのようなフォーメーションがよいとされています。そのためシルエットは小ギクに比べほっそりした感じになります。

 スプレーギクの多くの品種は秋ギクタイプ(自然日長で10月頃開花)で、栽培農家は電照と短日処理によって開花調節を行い、周年栽培をしています。しかし、夏は短日処理するので、花芽ができる時期の温度が高すぎ、開花が遅れたり先に述べたフォーメーションが崩れてしまい、商品価値が著しく低下します。栽培農家は加温をしたり、その土地の気候に適した品種を選択したりして、より高品質の花を生産する努力をしているのです。

2003.8
奈良県農業技術センター 花き栽培チーム 角川由加