注意 過去に掲載されたトピックスは時間が経過し、現下と異なる点もございますのでご了承下さい。

さし木について

 大半の方は、小学生のころ授業でさし木について習ったり、キクのさし木を経験されていると思います。さし木は非常に身近な繁殖技術であり、特別なものではありません。しかし、熟練者でもうまくいかないこともあり、意外に奥が深い技術でもあります。それはさし木できる植物が非常に多くてそれぞれに適した方法や条件が異なることと、技術の進歩によってさし木できる植物自体も増加してきたことがあると思います。

 植物を増やすための方法は種子繁殖と栄養繁殖に大きく分けられます。種子繁殖で養成に長期間必要な植物や、品種固定が難しい花きや果樹では株分けや接木、さし木等の栄養繁殖が行われてきました。さらに最近では組織培養も栄養繁殖の一種に分類されます。

 さし木は茎や葉、根など植物の一部を切り取りさし床にさして不定根、不定芽を発生させて新しい植物体を得る方法です。

 さし木の成功失敗は水管理によるところが大きく、普通は細霧で水を自動的に散布する設備を用います。近年は安価で良いコントローラーがあり、葉のしおれを防ぐために散水間隔を頻繁(一回/分)にして一回の散布時間は葉が濡れる程度の時間(数秒/回)で止めます。長く散布してさし床が過湿になると酸素要求量の多い発根部分への酸素供給が悪く発根が遅れます。さし床の水分がやや少ない状態の方が根の発達が良くなる性質を植物自体が持っています。手かん水で行う場合も葉水を頻繁にかけ、量を少なくするのがポイントです。水を与え過ぎると過湿による失敗が多くなります。植物によって異なりますが、例えば、はじめは葉が乾かない程度に多めで、後半は葉が乾く程度に少しずつ少なくしていくと発根が早まります。

 また暑い時期は木陰や建物の北側を利用します。それでもまだ蒸散量が吸水量を上回って葉がしおれる場合は葉の一部を切ったり、除去しますが、光線量と葉の量を少なくするほど、繁殖時の光合成量が低下して発根が遅れ、病気の進入も受けやすくなります。しおれない範囲でできるだけ光線を当てることがさし木を上手に行うポイントです。気温の低い時期なら、ビニールで覆い密閉すると水をやらなくても水分の蒸散が防げ活着率が高まります。

 培地は排水性が良く、保水性があり、肥料分を含まず、清潔なものを選びます。ピートモスとパーライトを半々に混ぜたものが適しています。さし床を厚め(十センチメートル程度)にすると発根部分の水分含量が下がりやすく、発根しやすくなります。


接ぎさしの様子

2003.9
奈良県農業技術センター 専門技術員 渡辺寛之