注意 過去に掲載されたトピックスは時間が経過し、現下と異なる点もございますのでご了承下さい。


里山に「ササユリ」を

  わが国には15種のユリが生育しています。その中でも日本にだけ自生しているものには、ササユリ、ヤマユリ、オトメユリ、サクユリ、ウケユリ、タモトユリ、イワトユリの7種があります。

 なかでも中部地方以西に分布するササユリは、姿も香りも清楚・可憐そのもので多くの人に好まれている野生植物の一つです。花は6月から7月にかけて咲き、花の色は濃桃色から白色まで変化に富んでいます。名前の由来は、葉の形が笹の葉に似ていることや、笹原で多く生育しているために名付けられたものと思われます。

  もともとササユリは、人里近くの里山に自生し、人の手が入ることによって生育できる環境が維持され、守り育てられてきた里山の植物です。残念なことに最近その姿を見かけなくなりました。薪から化石燃料主体の生活にかわって以来、里山の管理がおろそかになって、里山としての自然が崩壊したことが大きな要因と考えられます。もちろん稀少化するにつれ、人為的な乱獲がそれに拍車をかけてきたことは言うまでもありません。環境が変わり里山では見かけなくなったササユリですが、最近ではむしろ下草苅りや枝打ち等で管理されたスギ、ヒノキの人工林で見かけることがあります。植林後のさまざまな管理により、ササユリが生育するのに好都合な環境に保たれるためと思われます。

 山菜摘み、木の実拾いやキノコ採り、さらに薪や落ち葉集めなど里山は人の生活と密接に関係し、むしろ利用されることで自然が守られてきました。このような里人による無意識のうちに行われてきた生活のための営みが、里山の環境を維持するのに効果的にはたらいてきたためと考えられます。

  ササユリの復活が叫ばれて久しいですが、復活への第一歩は里山を本来の姿に戻すことです。ササユリが咲き乱れ、チョウやトンボが飛び交う里山が復元出来れば、従来のテーマパークにはない直接自然と接することができるレクレーション緑地(里山公園)としての活用が可能になります。都市住民との交流の場として、農山村の活性化にも十分貢献できるはずです。

里山にササユリを

2004年6月
奈良県農業技術センター
奈良県病害虫防除所長   荒井 滋