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鉢花を長く楽しむには(鉢花品質低下の要因)

 「鉢花」は「切り花」に比べ観賞期間の長いのが当然ですが、どの程度の観賞期間があれば、人は満足するのでしょうか?農業技術センターでアンケート調査を行った結果によると、例えば、鉢花シクラメンでは、2~3ヶ月もてば満足すると答えた人の割合が多いことが分かりました。「鉢花だから何もしなくても、それくらいもって当然だろう。」と思う方もおられると思いますが、購入後の手入れや観賞方法などの違いによって、楽しめる期間がずいぶん変わってきます。

まず、手入れの代表的なものに「水やり」があります。通常、「水やり」は植物を植えてある土の表面が乾いてから行います。全く「水やり」をせずに枯らしてしまうのは論外なのですが、鉢花を可愛がるあまり、どんどん水を与えたり、「水やり」が面倒だからといって、鉢の底を水に浸しておくと過湿により根が生育不良をおこし、ひどい場合には先端部から枯れてきます。こうなると植物は水はおろか土の中に含まれている栄養分を吸収することもできなくなります。さらに,根が枯れ始めるときに植物体からエチレンガスなどが発生し、よけいに生育不良や落花、落葉が助長されます。こうして、鉢花の品質はどんどん低下し、観賞期間が極端に短くなります。

 次に、鉢の置き場所によっても、観賞期間は影響を受けます。植物には固有の生育適温があり、光合成をきちんと行うために必要な光量も決まっています。従って、極端な高温や低温になったり、光がほとんど当たらない薄暗い場所などに長期間置かれた場合には、生育に必要な機能が低下し、生育不全を起こします。これも鉢花品質を大きく低下させ、観賞期間を短くする原因となります。

例えば、鉢花シクラメンの生育適温は15~20℃程度ですが、一時的なら0℃付近の低温にも耐えることができます。また、10℃以下の温度であっても、低温時には光合成能や呼吸量が低下して代謝が抑えられますので、多少光量の少ないところでも急に品質が悪化することはありません。しかし、気温が25℃以上になりますと呼吸などによる消耗が激しくなり、鉢花品質が著しく悪化していきます。

冬の鉢花が品質低下を起きおこす典型的な例として、ファンヒーターなどの温風を直接当ててしまうことがあります。人が寒いときには鉢花も寒く感じていると思い、部屋の中でファンヒーターの乾いた温風を直接当てると、葉が突然黄色くなってきたり、花が急にしおれたりします。温風の高温と乾燥により植物の細胞が急速にダメージを受けることによるのですが、回復不可能なまでに悪化することも珍しくありません。

(シクラメンの栽培風景)
2005年12月
奈良県農業技術センター
花き栽培チーム 総括研究員 前田茂一