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ショウブにまつわるややこしい話

 端午の節句の飾りやショウブ湯として親しまれているショウブは、サトイモ科の植物で、全草に強い芳香があり、古くは邪気祓い、魔除けとして、また、発音が「尚武」「勝負」と同じで、葉が剣状をしていることから男子の節句に使われたとされています。漢方では、香りの精油成分が多い菖蒲根が健胃剤に使われる他、鎮痛効果や血行促進効果があると云われています。さわやかな香りのショウブ湯は市販の入浴剤と違った雰囲気が味わえます。
 ショウブは沼地や溝など湿地に生育し、70cm程の直立した葉を出します。花は黄緑色で目立たない小さな花が密集した肉穂花序(にくすいかじょ)で”ガマの穂”のような形をしています。しかしながら、ショウブ園でお馴染みのショウブは、アヤメ科の植物で、日本古来からある野生の「ノハナショウブ」を品種改良されたもので、ショウブ湯に使う植物とは別の植物なのです。花が美しく、ショウブに似た葉姿からハナショウブ(花菖蒲)といわれています。ハナショウブは純日本産の植物で、800年前ごろから書物に採り上げられていますが、本格的に栽培・鑑賞対象になったのは江戸時代になってからです。
 ハナショウブは、水辺など湿った土地を好みます。ショウブ園では、水管理や雑草管理がし易いため、水田に植えられていますが、始終、水に浸かるのは好みません。葉の中央に隆起した中筋が入っているのが特徴で、花は大きく、花色も白から紫を基調にして豊富です。
 また、5月ごろ水辺や湿地で鮮やかな黄色い花を付けるショウブは「キショウブ」と言われ、ヨーロッパ原産で、明治30年頃輸入され、それまで日本には白から紫色のハナショウブしか無かったため、貴重な色として、また、繁殖力が強いため全国に広がり野生化しています。最近では、ハナショウブとの交配により、黄色のハナショウブも作られています。
 ところで、ショウブの漢字は「菖蒲」、アヤメの漢字も「菖蒲」でどちらも同じ漢字が当てはめられています。奈良時代に中国から端午の節句の行事を導入した時に漢字を間違えたため、異種同名混乱が生じたと云われています。
 もう一つ、ややこしい話をしますと、「いずれが菖蒲か杜若(カキツバタ)」と云う言葉があります。いずれ劣らぬ美しさを例えとして使われますが、ここで云う菖蒲はサトイモ科のショウブでなく、アヤメのことです。
 そこで、アヤメとカキツバタの特徴をあげると、
 アヤメは、水と関係のない陸生の植物で、畑などに植えることができます。花は比較的小さく、外弁の元に紫と黄色の虎斑が特徴で、花色は紫か白色です。葉は細長く直立しています。
 カキツバタは、沼池など湿地で群生している場合が多く、花色は紫。外弁の元に白か淡黄色の細い筋状の模様があります。葉幅は3cmぐらいで垂れ葉です。古くには、紫色の花から採った汁で布を染めたことから「書き付け花」と云われたのが語源とされます。

2006年5月          
奈良県農業総合センター
環境安全チーム 統括研究員 小野良允