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オウトウのおはなし

 皆さんは「オウトウ」と聞いて何を思い浮かべますか?「西吉野と十津川の間にある村かいな。」「それは大塔村やんか。」というツッコミがかえってきそうですが、「桜桃(オウトウ)のことかな。」と答えられた方はかなりの通だと思われます。そうです、「オウトウ」とは「さくらんぼ」のことです。 

「オウトウ」は全国で約4,200haの栽培面積があり、ミカン・リンゴなど他の果樹が減少傾向にかかわらず、面積が増えている果物です。
オウトウはバラ科サクラ属に属し、現在経済栽培されている甘果オウトウ(セイヨウミザクラ)および酸果オウトウ(セイヨウスミノミザクラ)が属するヨーロッパ系のものと、中国オウトウ(シナノミザクラ)とよばれる東アジア系の2つの系統があるとされています。日本へは明治の始めに導入され、その後栽培試験・品種改良が行われ、現在に至っています。主な品種として「佐藤錦」「高砂」「ナポレオン」などが有名です。

「オウトウ」の栽培上の特徴として、雨があたらない工夫が必要となります。他の果実と違って果実表面にある気孔より雨が侵入し、果実が割れてしまうからです。そのため、パイプハウスや開閉式のテントなどによって、雨を防ぐ必要があります。また、4月の開花期の低温や降雨などの天候不順によって受粉が妨げられ、着果が安定しにくいことも特徴的です。うまく実が着いて、6月の収穫期初夏の光を浴びて光り輝く果実はまさに赤いダイヤです。

「オウトウ」は山形県を中心に寒い地方の果物という印象が強いと思います。しかし、暖かい地方でも栽培することは可能です。暖い所で栽培すると、収穫時期が早くなり、糖度が高くなって美味しくなります。ただし、病害虫が増えることがあるので、適期の防除が必要となります。
果樹振興センターでも数年前より栽培試験を始めており、一昨年より収穫調査しています。主産地の山形より2週間前後早く収穫でき、食味も良好です。あと数年すると、奈良県産の「オウトウ」が皆様のお口に入る日がやってくるかもしれません。

2001年5月
奈良県農業技術センター 果樹振興センタ- 
果樹栽培チーム 総括研究員 今川順一