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接ぎ木の話

 みなさんは果物を食べたとき、種があったらじゃまだと捨てていらっしゃることと思います。しかし、「ひょっとすると播いておくと同じ果物がなるのでは?」と思って播いたことがある方がいらっしゃるかもしれません。では「播いてみると同じ果物ができるか」というと必ずしも、そうはなりません。植物の種は通常雌しべにおしべの花粉がついて、受精することによってできます。つまり、他の樹の花粉と受精した場合にできた種は、雌しべ方の遺伝子と花粉方の遺伝子をもらうので雑種になり、その種から育てても親と同じ果物はならないというのが普通です。そこで、果樹ではおいしい果物のなる樹を増やすのに、接ぎ木という方法を使います。

 接ぎ木をするにはまず、増やしたい樹の枝を冬に切り取って冷蔵庫等で乾燥させないように保存しておきます。春暖かくなり芽が動き始めたら、保存した枝を切って1芽か2芽付いた短い枝(穂木という)に切ります。穂木と台木(接がれる樹)をナイフで削り(図)、各々の形成層という組織同志を密着させるようビニールテープ等で固定します。接いだ部分は溶けたロウを塗ったり、ビニール袋で覆うなどして乾燥させないようにします。こうすると穂木と台木の形成層がまるで人間の傷が治るときのようにくっついて、目的の穂木の芽が動き出して生長します。同じ樹からとった穂木は遺伝的に全く同じなので、このようにして増やした樹はクローンなのです。穂木がカキの場合、台木はカキであればたいてい何でもいいのですが、人間にも相性があるように台木と穂木の組み合わせによっては接ぐことはできてもその後の生長や果実品質がよくない場合もあります。

 接ぎ木というと特殊な技術のように思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、穂木の保存が適切になされていれば、初めての人でもそれほど難しい技術ではありません。1本のカキの木に別の品種を接げば、1本で2種類のカキが食べられます。家に1本しかない果樹を増やすときも、適当な台木があればわざわざ苗木を買わなくても接ぎ木で増やすことができます。

2002年3月
奈良県農業技術センター 果樹振興センター 果樹栽培チーム 
主任研究員 浦崎孝行

「挿し芽・挿し木・接ぎ木」山田卓三著(有紀書房)より引用