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枝を切られる側の都合

 樹木の枝は何故切られるのでしょうか。人間を中心に考えると「大きくなると、じゃまになるから」「果実を大きくするため」「毎年、剪定しているから」などの理由が考えられます。樹木にとっても「過繁茂による病害虫の発生防止」「強風による倒伏防止」などのメリットが期待できます。

 さて、枝を切る時に切られる側(樹木)の都合を考慮して枝を切ると、樹木が長生きするのを御存知でしょうか。細かい枝は気にする必要はありませんが、直径数cm以上の枝を切る時には、切り口からの腐朽を防止する枝の切り方があります。これは、切られた後に樹自身が自助努力で傷口をふさごうとする成長を、効率良く行える環境を作ってやる方法です。

 具体的には、枝が幹から分かれる部分に枝の部分と幹の部分の境目があり、それに沿ってきれいに切ってやると、残された幹の組織がスムースに成長して傷口を早くふさぎます。この境目を的確に判断することがポイントになります。一般的には枯れ込みを考慮して少し枝の部分を残している場面をよく見かけますが、これがじゃまになり樹木が自身の成長で傷口をふさぐことができません。また、切り口の上部から新しい枝が伸び出すこともありますが、生きている部分はその新しい枝から幹をつなぐラインのみで、その他の部分は枯れ込んでいきます。なお、細い枝の場合は長目に切り残して、一年後に境目がはっきりしてから切り直すという方法もあります。

 これとは逆に、枝の跡形をなくすように幹に沿ってまっすぐに切り落としてしまうと、枝を支えるために張り出していた幹の部分の組織が傷つけられ、傷口が大きくなってしまい治りが遅くなります。樹木のために、きれいに切り落としてあげたつもりでも生育にはマイナスです。
また、切り口はとくに周縁部のデコボコをなくし、ゆ合促進剤を切断面に塗ってやると傷口のふさがりが早まります。

 脚立や樹の上での作業は、不安定で無理な姿勢の場合が多いものですが、適切な位置で枝を切り落としてやることが、樹木を長生きさせることにつながります。枝を切られる側の都合も考慮して、身の回りの樹木と末永く仲良くお付き合いしたいものです。

農文協「図解樹木の診断と手当て」より

2003.4
奈良県農業技術センター 総括研究員 西野精二