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冷夏で遅れたアケビ

 10月に入り運動会が始まる頃、里山ではアケビの実がぶら下がっているのを見つけることができます。今年は10月中頃になってもまだ閉じたままの果実や、開いても果肉が離れずしっかり残っている果実が多く見られました。夏が涼しかったため例年より1週間ほど生育が遅れていたようです。

 一般にアケビと呼んでいるものにもいくつか種類があります。葉が楕円形をした5枚の小葉のものがアケビ、小葉が3枚で葉に切れ込みがあるものをミツバアケビ、アケビとミツバアケビの交雑種で小葉が5枚で葉にきれこみがあるゴヨウアケビの3種が日本にあります。県内でも少し探せばアケビとミツバアケビの自生が見られます。生育の良い自生地は水はけがよく適度な水分を保つ有機質に富み、日あたりの良い浅い谷間や川辺、傾斜地、山道のわきなどです。

 これらアケビ類は落葉性のつる植物ですが環境によって茎の性質をうまく変えます。株が若くて上を目指すだけの体力がないうちは、まっすぐなほふく枝(はいづる)が地上を這って各節から発根し、その腋芽も新梢となって繁り養分の蓄積に励みます。十分な体力がつくと、こんどは上へ伸びるタイプのつるを伸ばして左巻きに絡みながらほかの植物をぐんぐん抜いていきます。うまく日あたりの良い所に葉を広げられると花芽がつき、翌年の4月中頃に雌花と雄花が房になった紫色のきれいな花穂を垂れ下げます。花は他花受精によって果柄の先に1から6個の果実をつけます。果実は長卵形をしておりアケビは長さ8センチ内外と小ぶりなのに対して、ミツバアケビは10センチを超える大型です。

 果皮は熟すと紫色になり縦すじが入って開き、黒い種子を包んだ乳白色のゼリー状の果肉をのぞかせて芳香を放ちます。種が多いため可食部分はわずかしかありませんが、果肉はショ糖と果糖を含み柿に似た上品な甘みと柔らかいバナナのような独特の舌触りがして美味です。

 根の付いたほふく枝を採取するか水洗いした種子を播いて苗にできます。庭先でも栽培が簡単ですので秋の山里を家庭でも楽しんでみてください。


アケビの葉 と ミツバアケビの葉

ミツバアケビの果実

2003.10
奈良県農業技術センター 農業情報・相談センター 総括研究員 前嶋文典