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国産紅茶について

お茶の葉を収穫してビニール袋などに密封しておくと、緑色の葉がすぐに赤黒く変色してしまいます。この現象は、主として茶に含まれるタンニンが酵素の作用により酸化するために起こります。この酸化作用を利用して作られているのが、ウーロン茶や紅茶です。ちなみに緑茶は茶の葉を摘んですぐに蒸したり、炒ったりして酸化酵素の働きをとめ、緑色を保ったままのお茶に仕上げるものです。品種それぞれに適、不適はありますが、発酵させるかさせないかで緑茶、ウーロン茶、紅茶を作りわけることができるのです。

さて、紅茶ですが、インドやスリランカ産は有名ですが、日本でも一時期生産されていました。波多野村(現山添村)史には昭和35年に約20haの紅茶園と民間企業による紅茶工場があったと記されており、昭和33年のロンドンで開かれた全世界紅茶品評会にて波多野村産の紅茶が最優秀賞を獲得したそうです。

 日本に紅茶が導入されたのは明治7年からで、中国から製茶技師を招へいしたり、インドへ研究員を派遣したりと、紅茶の生産振興が図られました。第2次大戦以後も作られており、海外への輸出なども行われていました。しかし、国産紅茶の品質が外国産のものと比較して見劣りすることや、生産費が高いということから次第に影が薄くなり、昭和46年の紅茶の輸入自由化後は、ほとんど生産されなくなりました。

 しかし、近年直売や通販など大規模な流通経路にのらなくても少量販売できる方法が出てきたことと、消費者のお茶への嗜好の多様化により、国産紅茶を作って販売する動きが出てきています。本県でも月ヶ瀬村で女性グループの方たちが作っており、月ヶ瀬村の直売所等で販売しています。また、その他にも紅茶の試作に取り組んでいる生産者の方もおられるようです。この国産紅茶、お味の方はインドやスリランカの香りの立つものとは少し趣きが異なります。穏やかな味と香りでまさに「和風紅茶」であり、ストレートで飲み、ケーキよりも饅頭や羊羹が似合う紅茶、というのが私の感想です。国産紅茶はまだまだ量が少なく、珍しいものですので、機会がありましたら是非飲んでみてください。

2001年11月
奈良県農業技術センター茶業振興センター 
茶栽培チーム 主任研究員 宮本大輔

表.日本の紅茶(ウーロン茶含む)の生産量の推移
(単位:t)

全国 奈良県
1935年 1,257.2 7.0
1940年 2,924.5 3.0
1955年 8,525.2 7.0
1965年 1,557.3 14.0
1970年 254.0 3.0
1980年 5.0
全国生産量は農林水産省「茶統計年報」、奈良県生産量は奈良農林統計協会発行「大和茶」による