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十津川の釜いり茶について

 昨年5月初めに十津川の「釜いり茶」を見る機会がありました。日本で作られている緑茶は収穫したお茶の葉を「蒸す」か「炒る」かのどちらかの方法で発酵を止め、その後お茶に圧力を加えながら風と熱を与えて乾燥させていきます。奈良県の場合、販売ものはほぼ100%が「蒸す」という製法で作られています。

 しかし、この十津川村を含む奈良県南部地域では、珍しく自家用消費用(ごく一部を販売用)として「炒る」製法でお茶を作っています。十津川村では、ほぼ全戸の農家が、畑の一角に植えたり、あるいは図のように生け垣を作ったりして、お茶を栽培しています。そして春の新芽を手でていねいに摘んで、各家で手作りのお茶を作っています。

 ではどのようにして作るのかといますと、まず摘んできたお茶の葉を図のような大きな鍋で一気に煎ります。その際には葉を焦がさないように手早くかきまぜなければなりません。葉がしんなりしてくればむしろなどの上で団子状にして手で転がしながら十分に圧力を加えます「揉む」。 ある程度揉んだ後、塊をほぐしてお茶をひろげ、さらに天日で乾燥させながら揉み上げます。最後に、むしろに広げ天日で乾燥させます。できあがったお茶は飲む前に焙じます。このお茶は我々が見慣れている緑色のお茶ではなく、どちらかといえば「ほうじ茶」に近い茶色のお茶になります。デパート等でたまに見かける九州などで作られている「釜いり茶」は、茶葉中の水分がほとんどなくなるまで茶葉に圧力をかけながら乾燥させますので緑色は保たれています。十津川の「釜いり茶」はこの地域独特の製法といえるかもしれません。

 飲んでみると「ほうじ茶」によく似ていますが、一番茶で作られているせいか
「ほうじ茶」よりこくがあるように思われ、とてもおいしく感じられました。

 お茶は日本人の食生活には欠かせないものであり、以前は十津川のようにどこででも栽培され簡便な製造方法でお茶が作られたものと思われています。ゴールデンウイークごろに十津川村へ遊びに行けば、農家の軒先で釜いり茶を作っている光景が見られるかもしれません。

2001年4月
奈良県農業技術センター 茶業振興センター 
茶栽培チーム 主任研究員 宮本大輔

釜炒り用鉄鍋


生け垣としての茶