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中国における蒸し製緑茶について

  緑茶とは摘み取ったお茶の葉を速やかに蒸したり、煮たり、釜で炒ったりして熱処理を行った後、加工し乾燥したお茶のことを言います。その名の通り緑色を保っているのが特徴で、日本の緑茶は蒸し製で、中国の緑茶は釜炒り製になります。

 日本における蒸し製緑茶の製法の基礎は、中国の唐や宋の時代に最澄や空海、栄西などの高僧が中国からもたらしたと言われています。以降様々な技術的進化により今日の日本独自の蒸し製緑茶となっています。一方、中国では明時代に入り釜で炒る製法が広まり、以降の中国においては釜炒り製法が中心となっていきます。現在の中国では特異な例を除き、日本に伝わった蒸し製のお茶を見ることができません。

 では、特異な例とはどのようなことでしょうか?実は現在日本国内の緑茶の消費量は9万tから10万tぐらいですが、そのうちの15%程度は輸入されており、そのほとんどが中国産です。とくに緑茶ドリンク需要の急増に合わせて輸入量が伸びてきており、緑茶飲料の原料や緑茶に含まれる機能性成分のカテキンなどの抽出用、あるいはドリンク需要によって玄米茶やほうじ茶などに使う安価な国産茶の供給量が減少したのを補うために使われているようです。

 浙江省や安徽省など中国緑茶の主力産地に日本の商社などが日本の茶の加工機械を持ち込んで日本向けの蒸し製緑茶を作っています。品種は日本のものではなく、地元にある品種を用いて製造している場合がほとんどです。価格が安いことに加え近年品質も格段に向上しており、日本国内の産地にとって脅威となりつつあります。
 平成16年版社団法人日本茶業中央会の茶関係資料によりますと、中国の茶の消費量はインドについで2番目に多いのですが、一人当りになると30位であり、中国人のお茶消費量が増大する余地はまだまだあると思います。  
 そこで蒸し製緑茶が中国で飲まれるようになれば、日本へ向ける余裕がなくなってくるのではと思います。しかし、蒸し製緑茶がもともと中国生まれの製法であるにも関わらず中国語で「腥(シン)」と表現されるような独特の香味や水質の違いもあって、現代の中国人の口には合わないようです。残念ながら、中国国内での蒸し製緑茶の再認識は現状のところなさそうです。

中国緑茶生産茶園
中国浙江省杭州市郊外の日本向け緑茶生産茶園
(平成16年11月)
2005年6月
農業技術センター茶業振興センター
茶栽培チーム 主任研究員 宮本大輔