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番茶のお話

 番茶と言えば、私たちに最も身近なお茶でしょう。中でも焙(ほうじ)をかけた、焙じ番茶の香ばしい香りと味は、日本人なら誰もが親しんでいるものと言えます。

 番茶を『広辞苑(第5版)』で引いて見ますと「摘み残りの硬葉で製した品質の劣る煎茶。」とあって「番茶も出花 番茶も入れ立てはおいしい。云々」と続きます。この出花の字は、出端の方が良いように思いますが、つまり「番茶」と言う言葉は摘み残った葉で作る番外茶のことなのです。例えば、八十八夜に摘まれた新しい芽で作った茶は1番(一番茶)で、それから一~二ヶ月後にまた出てくる新芽からは二番茶が取れます。暖かい土地ならこの調子で4番(四番茶)までが取れますが、番茶は常に新芽をつみ取った残りの茶葉で作られるお茶を指しています。
 ところが、近頃は品質が悪く、価格が安い商品に「番茶」の名称が使用されていたり、特殊な茶に使用されたりしています。

 番茶の名の使用例としてめぼしいところでは、「梅雨番茶」や「日干番茶」、「京番茶」、「阿波番茶」などと言う言葉があります。
 「梅雨番茶」は、奈良県の様に一番茶の後に番茶をとると、丁度梅雨の時期に当たりますのでその名があります。「日干番茶」の方は、昭和前期までよく見られた一番茶をとった枝をのばし続け、真夏に伸びきったところで刈り取り、蒸すかゆでるかした後に、ムシロの上で揉み、そのまま天日干しするものです。これは、そのまま飲んだり、ほうじ茶にしたりしますが、定義通りの本当の番茶です。ただ、吉野郡の山間地域では「日干番茶」の名前で八十八夜の新茶を釜炒りし、日干しにしたお茶があります。これなどは日干茶であっても番茶ではないと言うことになります。
 一方、「京番茶」と言うのは、玉露や碾茶(てんちゃ:抹茶の原料)を生産する時に出来る特殊な番茶です。玉露のように完全な被覆栽培をおこなう場合には、夏から秋に伸びる枝を十分に伸長させ、人の背丈ほどになった株を、早春からわらやよしずですっぽりと覆い、新芽は手摘みで全部収穫します。そしてこの長く伸びて残った茎を、刈り取って作るのがこの番茶です。
 さらに、「阿波番茶」と言うのは、四国山地で作られる特殊な後発酵茶で、お茶の漬け物と言える製品であり、高知県では碁石茶と呼ばれます。これは夏近くまで伸ばして置いた茶を刈り取り、蒸した後樽の中に漬け込んで作ります。新芽や古葉が混在しているので厳密には番茶ではありません(ちなみに、茶葉を漬け物にするのは有史以前の方法とされ、なぜ日本にこのような技法が残存するのかは謎となっています。)。

 このように、「番茶」と言うお馴染みの言葉にも、地域や使用例で色々な混同が出てきていると言うことが分かります。あなたは、どんな番茶を飲んでおられるのでしょうか?

番茶

十津川村で見た日干番茶(上)と日干茶
2005年7月
農業技術センター 普及技術課
技術調整班  副主幹 寺田孝重