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お茶の木の護身術

  土の中や植物の葉の上には細菌・カビ・藻類など、たくさんの種類の微生物が生息しています。その数も多く、わずか1gの土や葉には数百万~数千万もの細菌が生息しています。皆さんの目には見えませんが、実は土の中や葉の上では微生物が栄養源・生息空間を求めて、激しい競争をくりひろげているのです。その微生物の中には植物の根や葉の中に入り込み、植物を枯らせ、栄養を吸収するものがいます。これが病原菌と言われるもので、多くの農作物に大きな被害をもたらしています。しかしお茶の木の葉や根には重大な被害が出る病気がありません。これはお茶の木が病原菌の攻撃から根や葉を守る2つの方法を持っているからなのです。
  1つ目はお茶に含まれる物質です。お茶(緑茶)の味は渋味・苦味・甘味・うま味から成り立っています。それぞれカテキン類・カフェイン・糖類・アミノ酸類という物質によるものです。その中で渋味の元であるカテキン類は、抗菌性と言って微生物を寄せ付けない性質をもっています。お茶の葉には糖類・アミノ酸類という微生物が好む栄養源がたくさん含まれています。それにもかかわらず、大きな被害を及ぼす病原菌がいないのは、カテキンのおかげと考えられています。現在その抗菌性という性質を利用して、お茶のカテキンは虫歯予防の歯磨き・ガムをはじめ、各種抗菌グッズに利用されています。
  2つ目はお茶の木の根に生息しているカビです。土の中には葉の上よりも多くの微生物がいるにもかかわらず、お茶の木の根はほとんど病気にかかりません。そこで根には葉にはない病原菌に対する防御機構があるのではないかと考え、当センターで調査しました。根の表面からカビを採り、土の中に生息している農作物の病原菌と同じシャーレ内で育てたところ、根表面のカビは土の病原菌を強く抑えました(写真)。一般に植物の根はアミノ酸類をはじめ多くの栄養源をだしています。これは根の表面に無害な微生物を育て、病気を起こす有害な微生物から植物を守るためと言われています。お茶の木の根は、病原菌を寄せ付けないカビを育てていることがわかりました。
 植物を研究していると、植物が病気や害虫から自分の身を守っているいろいろな方法がわかってきます。茶業振興センターではこの根の微生物を利用して、ほかの植物において病原菌の攻撃から守る方法を検討しています。

(写真 左:土壌中の病原菌 右:根の表面のカビ、)
2006年2月
奈良県農業技術センター 茶業振興センター
加工チーム 総括研究員 堀本圭一