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農薬と水

 今回は「農薬と水」についてお話ししたいと思います。多くの農薬は水に溶かしてから、使用されます。そして、散布された農薬は環境中で分解され、最後には消失しますが、それには水が大きく関係しています。また、水は私達人間が生きていく上で欠くことのできないものであり、農薬による水の汚染は私達の健康を害することになります。そこで、農薬と水について、人間の健康を含めてもう少し詳しく説明しましょう。

 市販されている農薬の中で、水和剤・乳剤と呼ばれるものは高い濃度の状態で容器に入っています(平成9年の生産額でみると、農薬全体の約6割を占めています)。その方が少ない量で運搬・保存でき、また、容器の中で農薬が分解しにくいからです。そして、散布する直前に水で何百~何千倍に希釈し、使用します。

 農薬は病気や害虫、雑草の発生した場所に対して散布されますが、その一部は地面に落下し、雨が降ると水によって洗い流され、水路などに流れ込みます。その途中で、農薬の大部分は水による化学作用や太陽の光、微生物によって分解されます。また、人間の健康や水中生物を守る目的で、法律により水中の農薬濃度について基準が定められており、河川や水道水中の農薬濃度は定期的に厳しく監視されています。

 一方、農薬の使用者は河川に流出する農薬の量を減らし、水環境を守る義務があります。雨の降りそうな天気には農薬を散布しない、散布中に大雨になったときは、直ちに散布を中止することが必要です。雨水によって農薬が洗い流されてしまうので、作物の病気や害虫に効果がないばかりか、農薬が河川に流れ込み、水を汚染する恐れがあるからです。また、余った農薬を水路に流したり、川に捨てることも水を汚染します。もちろん、家庭園芸で農薬を使用する場合も同様です。必要な量だけ薬液を作り、もし余った場合は、穴を掘り、土にしみ込ませることが必要です。そうすることで、農薬は土壌中の微生物によって速やかに分解されます。

 このように、「農薬」は使用されるときから分解されるまで、「水」とは切っても切れない関係にあります。また、農薬による水の汚染を防ぐことは、人間ばかりでなく、水中で生活する生物を守ることにつながっているのです。


1999年10月

奈良県農業試験場 土壌・水質管理チーム 
主任研究員 谷川元一