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冬の虫


 年が明けて寒さもいよいよこれからが本番ですが、虫たちは毎年野外で冬を越しています。どこかに床暖房のある暖かい家があるわけではありません。冬から春にかけての害虫の防除方法といえば、マシン油乳剤や石灰硫黄合剤の散布と、樹幹にワラなどを巻くコモ巻きなどが一般的です。これらは、いったいどんな虫をねらってるのでしょうか。前の2つの薬剤は、カイガラムシやハダニをねらい、コモ巻きはコモの内側に移動してくるケムシ類やカイガラムシなどをねらっています。虫たちは、卵や幼虫、さなぎ、成虫など、自分にあったスタイルを工夫し、土の中や樹皮のすき間に潜り込み、寒い冬を越しています。今、カキ栽培農家で問題となっているフジコナカイガラムシなどは、成虫が樹皮のすき間に潜り込んで春を待つタイプです。

 さて、ここでカイガラムシについてもう少し詳しくお話をしましょう。カイガラムシとは、樹の幹や枝に小さな貝殻が付いたように寄生している虫で、いろんな果樹や植木類で見られ、大発生すると樹が弱ったり黒いススが周辺に付きます。これは、カイガラムシが樹液を吸い続け、排泄物をあたりにまき散らしていることによります。カイガラムシの仲間には、堅い殻で覆われて樹にへばりついているものの他に、白っぽいロウ物質に覆われながらも歩き回れるものもあります。また、普通よく私たちが目にするカイガラムシはすべてメスで、蛹にもならず幼虫の形のまま大きくなったものです。オスは幼虫から蛹を経て羽の有る成虫になりますが、中には全くオスが存在しない種類もあります。そして、驚くことにオスの成虫には口が無く、何も飲み食いしないまま生殖活動をすることだけが使命で、数日間飛び回った後に死んでしまいます。みなさんは、このオスの一生を「哀れ」と思われるでしょうか、それとも「オス冥利に尽きる」と思われるでしょうか。

2001年1月
奈良県農業技術センター 果樹振興センター
主任研究員 西野精二