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雑草を味方にする?

古老は「上農は草を見ぬうちに草を除き、中農は草を見てからそれを除き、下農は草を見てもまだ除かない。」といって、雑草を生やさないことが精農家のように教えられてきました。雑草は農業の敵なのでしょうか。

 出穂時に稲穂を吸汁してお米に黒い斑点を引き起こす斑点米カメムシ類が、近年、全国で問題になっています。斑点米カメムシはエノコログサやメヒシバなどのイネ科雑草の穂などに卵を生んで、幼虫が穂から吸汁して大きくなり、増殖します。イネが出穂する20日前に除草しておくと、カメムシは生息できないので、どこかに飛んでいってしまいます。しかし、イネの出穂期に草刈りすると雑草のカメムシをイネに集めることになり、斑点米が増加してしまいます。斑点米カメムシ防除では、出穂前の除草は欠かせない作業です。

 ところが、その雑草がイネ科ではなく、セイタカアワダチソウやオオアレチノギクなどのキク科であったら斑点米カメムシ類は生息出来ません。キク科雑草には別のカメムシ類やその天敵であるクモ類や寄生蜂などが生息しています。水田に飛来した斑点米カメムシが畦畔のセイタカアワダチソウで休憩していると、クモなどが食べてくれます。つまり、雑草地は「害虫の巣となる。」と同時に「害虫を食べる天敵の巣にもなる。」わけです。

  天敵のすみかとなる植物をバンカープランツといい、そこには作物と共通の害虫がすみつかずに、天敵が増殖します。奈良県農業技術センターではナス圃場の周りの畦畔にソルゴーを植えて、ナスの害虫の天敵であるヒメハナカメムシなどのすみかを作り、ナスの薬剤防除が少なくなる方法を検討しています。ソルゴー(イネ科)のような牧草は雑草にも負けないスピードで成長するので管理が容易です。滋賀県では、水田畦畔にアジュガやシバザクラ、リュウノヒゲなどの草花の苗を植えて、斑点米カメムシ類の発生を抑制する研究をしていますが、草花の維持管理に大変な労力がかかるそうです。

 雑草が繁ると、農作物の肥料が奪われ、日影になって作物の生育は悪くなってしまいます。しかし、雑草は天敵の隠れ場所であったり、餌場にもなります。休耕田や畦畔の雑草を残して、作物の成長に影響がない程度に上手に管理できるようになれば、雑草地に天敵が増えて、雑草を味方にした害虫防除が可能になるかも知れません。


2001年9月
奈良県農業技術センター 環境保全担当 
虫害防除チーム 総括研究員 福井俊男