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見ているだけで進むサルの餌付け

 最近、ニホンザルのムレが里に出てきて畑を荒らすいわゆる<猿害>が問題となっています。この<猿害>を防ぐには、被害を受ける山間地域の集落の方たちだけでなく、山村を訪れるすべての方たちの理解が必要です。
 そこで、今回は少しだけ、みなさんにサルについて‘ものしり’になってほしいと思います。

さて、<猿害>が多発し始めた原因は、という議論になると、「広葉樹林が植林でスギ、ヒノキに代わり、サルの餌が減った。」「過疎化と農作業の機械化で、田や畑にいつも人が出ているということがなくなった。」といった理由をあげる人が多いようです。たぶん、こうしたことがきっかけとなりサルが里に現れ始めたのは事実のようです。

 しかし、繰り返し<猿害>が発生し、問題が深刻化している原因は、まったく別のところにあるのです。以前にもこのコーナーで少し述べたのですが、実は里に下りたサルのムレではサルの数が増え始めるのです。
 ドングリや木の芽を餌とする山のサルは自分が生きていくのがやっとという時期もあるため、初産が遅く、赤ん坊の半数近くが満一歳になれずに死んでしまいます。
一方里に下りたサルはというと、生長が早く、初産は4~5歳、赤ん坊の乳離れも早いため、2年連続して出産するメスもでてきます。母乳の出もよいので、赤ん坊が餓死することもなく、90%以上はすくすく育ちます。
これだと、里のサルは、4~5年で倍に増えてしまいます。

 里のサルが増えるのは、それだけ里では餌を手に入れやすいからです。農家も、カボチャやダイズなど農作物を荒らしているところを発見すれば追いますが、レンゲやタンポポを食べているサルを追う人は少ないようです。実は集落にはこうした<被害と意識されないサルの餌>の方が多いのです。都会からきた人の中には、レンゲ畑にたむろするサルをみて車をとめ、カメラを向ける人もいます。こうした行為が、知らず知らずの内に人を恐れないサルを生み出し、集落への接近(餌付け)を進めているのです。

 みなさんも、もし里でサルを見かけたら、心を鬼にして追っ払って下さい。
そして、「見たら追う」という行為は被害を防ぐだけでなく、山にサルをもどす保護手段と理解して下さい。

2001年11月
奈良県農業技術センター果樹振興センター
作物保護チーム 総括研究員 井上雅央