注意 過去に掲載されたトピックスは時間が経過し、現下と異なる点もございますのでご了承下さい。

低温期に発生する害虫たち

 昨年は害虫の当たり年で、奈良県でも米を加害し斑点を残す斑点米カメムシ類をはじめ、ナスの果実、キクの蕾などに幼虫が食入して加害するオオタバコガ、ダイズやイチゴの葉をムシャムシャ食べるハスモンヨトウ、キャベツやダイコンの心葉を加害するハイマダラノメイガなどが多発し、注意報を発表しました。昨年は、春から夏にかけて平年より気温が高いが多く、降水量も少なく推移し、これらの害虫が多発しやすい気象条件だったと言えます。

 一般に、高温で雨が少ない年は農作物の害虫が多発しやすく、低温で雨の多い年には病害が発生しやすいとよく言われます。しかし、害虫の中には秋から春にかけての比較的低温期に多く発生し、農作物に被害をもたらす変わり者もいます。

 ホウレンソウケナガコナダニという体長0.5mm前後の小さなダニは、夏には姿を見ることはありませんが、晩秋や春に多発し、ホウレンソウや野菜苗などに被害をもたらす害虫です。ホウレンソウケナガコナダニの1世代の期間は15℃では25~33日ですが、25℃では12日前後と短くなります。これだけ見ると暖かい方が発生に適しているようですが、産卵数は大きく異なり、25℃で約150個産卵するのに対し、15℃では約500個、10℃では約660個もの卵を産みます。さらに25℃では卵からかえらず死んでしまう率が高くなることが分かっています。このダニを冷蔵庫に入れても死ぬことはなく、取り出して顕微鏡で覗いてみてもすぐ動き出します。また、冬の積雪下のホウレンソウに寄生し、卵を保持していることが確認されています。

 ヤサイゾウムシはハクサイ、ダイコン、ニンジンのほか、レタス、タマネギなど26科もの野菜類を幅広く加害する害虫ですが、この虫は年1回のみの発生で、秋から春にかけて産卵し、冬の野外でも卵、幼虫、成虫で過ごします。寒い時期でも緩やかに発育を続けるため、冬でも家庭菜園のハクサイなどで時々被害が発生し、栽培者を驚かせます。

 このように、害虫の中には餌となる植物層が多い暖かい季節を避け、多くの虫が寒さに強い休眠状態で越冬している時期に発生し、増殖するものがいます。これもまた、生物の多様性のひとつの表れと言えるでしょう。


2002年3月
奈良県農業技術センター 環境保全担当 
虫害防除チーム 研究員 松村美小夜