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シンクイムシにご用心

 アブラナ科の野菜にはモンシロチョウ、コナガ、アブラムシなど、たくさんの害虫がつきますが、キャベツを植えたりダイコンの種まきをするこの季節に最も注意しなければいけないのは、通称「ダイコンシンクイムシ」と呼ばれているハイマダラノメイガという虫です。昔からいる害虫で、これまではあまり問題になっていなかったのですが、一昨年から発生が多く、キャベツやダイコンなどの産地で大きな被害が出ました。今年も引き続き発生が多く、注意が必要です。

 今まであまり重視すべき害虫ではなかったこの虫を、なぜそんなに警戒しなくてはならないかというと、キャベツやダイコンの株がまだ小さいときに、幼虫が生長点付近の葉を加害し、いわゆる「芯止まり」の被害をもたらすからです。キャベツでは正常に生育できず、わき芽に小さな結球がいくつも出来てしまい商品価値がなくなります。ダイコンでも正常に生育できなくなり、ひどい時は枯れてしまいます。せっかくたくさん種をまいても、油断しているとほとんどこの虫にやられてしまい、全面まき直しを余儀なくされることもあります。他の害虫はある程度発生してからでも対策がとれますが、このダイコンシンクイムシでは、気が付いたときには手遅れであり、そのため、非常に警戒されている訳です。

 果樹や野菜でいわゆる「シンクイムシ」と呼ばれている害虫はたくさんいますが、全般にたちの悪い被害をもたらすものが多いのです。このような壊滅的被害をもたらす害虫には予防的な対策を講じる必要があります。ダイコンシンクイムシの場合は、コマツナなどの軟弱野菜や家庭菜園では防虫ネットが効果的ですが、大面積で栽培するキャベツやダイコンでは粒剤等の農薬の利用もやむを得ません。こういった虫に対しては農薬は本当に頼りになります。

 ナシやモモを加害するモモシンクイガなどの「シンクイムシ」では、さらに一歩進んだ予防手段が開発されています。雄を呼ぶために雌の成虫が出す性フェロモンを化学的に合成して果樹園の至るところに設置し、雄が雌のところにたどり着けないようにする、フェロモンを利用する技術です。シンクイムシ達は交尾が出来なくて子孫を増やせなくなり、結果的に被害が軽減します。ただし、大面積に設置しなくてはなりません。

 このように、植物と害虫とのせめぎ合いの世界で、人間が植物側に味方してやることで、植物はすくすくと育つことが出来ます。作物は、結局、人間に食べられる運命ですけれども。
2002.9
奈良県農業技術センター 環境保全担当
虫害防除チーム  研究員 松村美小夜