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アメリカシロヒトリという害虫

昭和30頃から50年頃に、8月には桜の樹が葉がなくなって丸坊主になり、9月に花が狂い咲きするという現象が全国のあちこちで起こりました。サクラを丸坊主にする大害虫はアメリカシロヒトリという侵入害虫で、進駐軍の大量の荷物に蛹が潜り込んでアメリカ大陸から運ばれてきたといわれています。東京では昭和20年、大阪では昭和27年に発見されました。奈良県では昭和51年に初めて発生を確認しています。

卵からふ化した幼虫は4齢幼虫までは糸を吐いて集団で生活するため、遠くからでも目立ちます。成長すると3cmもの大きな暗黒色の毛虫となり、白くて長い毛を逆立てている様子は気持ちが悪いものです。多いときにはバリバリとサクラの葉を食べる音が聞こえ、樹の周り一面には虫糞が積もって、サクラを管理する役場には苦情が殺到しました。放っておくと丸裸になるので、公園管理者はサクラやプラタナスなどの並木に薬剤防除しなければならなくなりました。

ところが、昭和60年代から少なくなり、今ではすっかり姿を見なくなりました。平成4年の夏に櫻川や高田川沿いのサクラを調べましたが、1つのコロニーも見つけることが出来ませんでした。
アメリカシロヒトリは、侵入害虫であるため侵入当初は天敵が少なく、特に大型の毛虫の天敵である鳥やアシナガバチなども見慣れないムシなので敬遠した結果、増えてしまったと言われています。しかし、その後、薬剤防除が行われるようになったことや、この虫に慣れた鳥たちが餌として捕まえるようになってきたことで減少したのだろうと思われます。ちなみに、昭和40年頃、日本の昆虫学者がアメリカで調査したところ、アメリカシロヒトリは特に作物の害虫ではなく、どこにでもいるただの虫でした。

 今年の夏、斑鳩町の大豆畑で久しぶりにアメリカシロヒトリの被害を見つけました。捕まえて帰ったのですが、驚いたことに若い研究者は誰も見たことがないとのこと。アメリカシロヒトリはもう害虫ではなくなったのかと思いました。

2002.10
奈良県農業技術センター 環境保全担当 
総括研究員 福井俊男