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植物と病原菌の追いかけっこ

 皆さんはタンポポの綿毛のような種子を吹いて遊んだことがあるでしょう。またホウセンカの実をさわって破裂させたことがあるでしょう。植物は動けないから昆虫や病原菌から逃げることができません。だから全滅しないよう種子をできるだけ遠くにばらまいているのです。果物がおいしいのは、動物や鳥に食べてもらい種子を運んでもらうためで、植物は生き残りをかけて、このように種子を遠くに運ぶ手段をいろいろ発達させてきました。スミレ類の種子にはアリを引きつける物質が含まれ、スミレ類はその種子をアリによって運んでもらっています。スミレ類は日当たりが良く、水はけの良い所を好み群生していますが、アリもそのような所に巣をつくります。だからスミレ類は種子の運び屋としてアリを選んだのでしょう。

 さて奈良県の花壇苗生産農家では、スミレの1種であるパンジーが主に栽培されていますが、根腐病という病気がたくさん発生して大きな問題となっています。根腐病菌は土の中で生存するカビの1種であるところから、これまでは土や資材にくっついて伝染すると考えられていました。ところが農家のビニルハウスを調査した結果、そこに発生しているミギワバエと言うハエの糞の中に根腐病菌が発見されました。根腐病にかかったパンジーでミギワバエを飼育したところ、ハエの糞中に病原菌がたくさんいることがわかりました。次にそのハエを病気にかかっていないパンジーと一緒に飼育したところ、パンジーに根腐病が発生しました。ハエがその糞を介して根腐病を媒介することが証明されたわけです。さらに調査すると、根腐病菌はミギワバエを引きつけることが明らかとなりました。これらのことから「スミレは根腐病菌などから逃げるために種子の運び屋にアリを選び、根腐病菌はそれを追ってハエを運び屋に雇った。」と考えることができます。農業技術センターで研究をしているとこんなおもしろい発見もあるのです。
パンジーの病気を運ぶハエ
2003.8
奈良県農業技術センター 
環境保全担当 病害防除チーム 堀本圭一