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土壌の酸性度(pH)と農作物の病気

 農作物に発生する根腐病や線虫などの土壌病害虫に対しては、「輪作」が最も有効な予防策であることは以前にお話ししました。今回は土壌病害の予防に役立つ、土壌の酸性度(pH)と病害の関係についてお話しします。
 
 農作物を畑に植え付ける前に草木灰や石灰をまくと、病気が発生しにくくなったり、農作物の生育がよくなることが昔から経験的に知られています。ではなぜ、畑に草木灰や石灰をまくと良いのでしょうか?それはまず肥料成分として草木灰にはカリウムが、石灰にはカルシウムがそれぞれ含まれているからです。次に草木灰や石灰は土壌の酸性度(pH)をアルカリ性に近づける働きがあります。pHとは、酸性かアルカリ性かを示す値で、pH7の中性を境として、1~7を酸性、7~14をアルカリ性の程度で表します。日本の土壌のほとんどは酸性土壌であり、雨によってカルシウム等のアルカリ分が流されて酸性化が進みます。土壌をアルカリ性に近づけてやると土壌中の微生物(特に細菌類)の活動が盛んになり、病原菌の棲みかである有機物の分解が促進され、糸状菌などの土壌病原菌との争いも激しくなって病気の発生が抑えられます。キャベツやコマツナなどのアブラナ科野菜の根にこぶを作る「根こぶ病」、トマトの根を枯らす「萎ちょう病」、落花生の地際部を犯す「白絹病」などは、アルカリ土壌で発病が抑えられることが知られています。但し、例外として放線菌によるジャガイモのそうか病やサツマイモの立枯病、あるいはレタスビッグベイン病やてん菜のそう根病のように、ある種の糸状菌によって媒介されるウイルス病は、アルカリ土壌では発病がひどくなる場合もあります。北海道のジャガイモやてん菜の産地では、生育をよくするのに石灰を入れたくても病気が怖くて入れることが出来ないと言う話があるくらいです。

 作物にはそれぞれ生育に適した土壌pHの範囲(一般的な作物では5.5~6.5)があり、これを極端にはずれると生育が悪くなり収量が減ってしまいます。土壌のpHだけで土壌病害を防ぐことは困難ですが、輪作に加えて栽培する作物と発生する怖れのある土壌病害の種類によって土壌のpHを上手く調節すれば、病気の出にくい土壌環境をつくることが出来ます。 
コマツナの根コブ病
コマツナの根に大きな ”コブ”をつくる「根こぶ病」
2004年4月
奈良県農業技術センター  
環境保全担当 病害防除チーム 総括研究員 西崎仁博