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蚊取り線香は殺虫剤の母

 夏から秋にかけて「蚊」によく悩まされますが、私たちのもっとも身近にある「殺虫剤」といえば、蚊取り線香ではないでしょうか。
 最近では「液体蚊取り」が主流となっていますが、蚊取り線香、蚊取りマットなど、時代とともに形は変わっても家庭の必需品として、昔から家にあると思います。
 ところで、「蚊取り線香」の原料は何か知っていますか。
 元々は、除虫菊(シロバナムシヨケギク)という菊の仲間の植物が使用されていました。この除虫菊に含まれる「天然ピレスロイド」に殺虫効果があるからです。現在では除虫菊の成分だけ線香に染み込ませているものが多く販売されています。

1.除虫菊の歴史
 除虫菊が最初に日本に入ってきたのは、明治時代に、殺虫剤「除虫菊粉」がイギリスから輸入されました。次にアメリカから種子を輸入し、やがて日本国内での栽培が盛んになり、一時は海外へ輸出するほど生産されていました。
 家庭用としては、明治時代から蚊取り線香の原料として、大きく貢献しています。
 また、農業用としては、除虫菊を原料とした「除虫菊乳剤」が作られ、農薬(殺虫剤)の先駆けとして、害虫防除に広く使用されました。

2.合成ピレスロイド剤の登場
 除虫菊に含まれている「 天然ピレスロイド」を基に化学合成されたのが「合成ピレスロイド剤」であり、1930年頃から開発され、現在も多く使用されています。
 「天然ピレスロイド」が日本を含む各国で研究され、構造の解明や、その構造を利用した新しい殺虫剤の合成、開発が盛んに行われ、現在の「合成ピレスロイド剤」へ発展していきました。
 家庭用としては、蚊取り線香、液体蚊取りの主成分だけでなく、殺虫スプレーなどでハエやゴキブリ用の殺虫剤の成分として利用されています。また、農業用としては、アブラムシなどの害虫防除用として活躍しています。
 このように明治以降、殺虫剤の主力として、活躍してきたピレスロイド剤は、蚊取り線香と共に「殺虫剤の母」とも呼べるのではないでしょうか。


2004年11月
農業技術センター
環境保全担当主任研究員 西川学