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外来雑草V.S.外来昆虫

 セイタカアワダチソウは戦前に我が国に侵入した外来雑草です。戦後急速に国内に広まり、花粉症の原因になると騒がれたこともあります。現在では身近に見られる最もありふれた、そして最もやっかいな雑草の一つになっています。秋になると2mくらいまで生長した群落が、休耕地や造成地などそこかしこに見られ、刈り取ってもまた翌年には生えてきます。セイタカアワダチソウの専門家である岡山大学の榎本敬氏は「今のように広がってしまったセイタカアワダチソウは手が付けられなく、天敵でも現れるのを待つしかない」と書いておられます。

 それでは、セイタカアワダチソウを食べる天敵にはどんなものがいるのでしょうか?最もよく見かけるのは、茎にびっしり密生している赤いアブラムシでしょう。これはセイタカアワダチソウヒゲナガアブラムシという虫で、1991年に北米より侵入したとされています。また、日本植物防疫協会の高木一夫氏によると、茨城県の牛久自然観察の森で、セイタカアワダチソウの葉を食べる蛾の幼虫が多発しているそうです。しかしこれらの虫は、セイタカアワダチソウを減らすほどの力はないようです。

 最近、このセイタカアワダチソウの新たな天敵が海外から侵入してきました。それはアワダチソウグンバイ(写真)という昆虫です。1999年に南米から侵入してきたこの虫は、ここ数年で近畿圏から中国、四国、東海地方へと急速に分布を広げており、奈良県では既に県内全域のセイタカアワダチソウに発生しています。その発生はすさまじく、春から秋にかけて、休耕地などの群落だけでなく、路傍や山際にぽつぽつと生えているセイタカアワダチソウにも激発しています。この虫が多発したセイタカアワダチソウを観察すると、葉が急速に黄化し、新芽が枯れて生長が止まってしまうものもあります。不幸なことに、アワダチソウグンバイはキクなども加害する害虫であるため、この虫の発生を手放しで喜ぶ訳にはいきません。しかし、戦後数十年にわたり最もやっかいな雑草であったセイタカアワダチソウを減らしてくれる救世主になる可能性があると考えられます。

 北米などでは、駆除がむずかしい外来雑草を減らすために、雑草の原産地から天敵昆虫を導入して野外に放すという、いわゆる生物的防除を行って、駆除に成功した事例があります。安易な外来昆虫の導入は、我が国に固有の生態系を乱す危険性があるので慎むべきでしょう。しかし、意図せずに侵入してしまった外来昆虫が、やっかいな外来雑草を勝手に駆除してくれたら、これはこれで一風変わった生物的防除の一例と言えるかも知れません。


アワダチソウグンバイ成虫
2005年10月
農業技術センター
虫害防除チーム 主任研究員 井村岳男