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農作物を病気から守る微生物農薬

 近頃、環境問題や食の安全・安心への関心が高まる中、農業の生産現場でも環境に配慮し、化学農薬の使用回数を減らした減農薬栽培への取り組みが進められており、その手段の1つとして生物農薬があります。
 これまで生物農薬と言えば、培養細菌が作り出す人には害のない毒素を利用したBT剤や、害虫に寄生あるいは捕食する天敵製剤など、ほとんどが害虫の防除に利用され、農作物の病気を防ぐ目的ではあまり利用されていませんでした。
 しかし近年、バチルス菌、エルビニア菌、シュードモナス菌などの細菌やトリコデルマ菌、タラロマイセス菌などの糸状菌を利用した病気を防ぐ微生物農薬が新たに開発され、利用され始めています。
 これらの微生物は、化学農薬のような直接的な殺菌力はありませんが、病原菌より先に圧倒的な数で植物に定着し、病原菌の取り付く場所と利用できる栄養分などを奪うことによって、病原菌の感染・増殖を抑えて発病を抑制します。

 微生物農薬を利用するメリットは、
1.使用する微生物がもともと自然界に広く生息しており、人に対する毒性もないことから人と環境にとてもやさし
  いこと。
2.農薬が効かない薬剤耐性菌が発生しないこと。

 逆にデメリットは、
1.病気の発生後に処理しても効果がないこと。
2.気温、湿度、降雨等の気象条件の影響を受けやすく、利用できる条件が限られること。
3.通常効果がある病気の種類が少ないこと。
 微生物は生き物ですので化学農薬と同じように使える訳ではありません。

 実際に生産現場で減農薬栽培に取り組むためには、まず輪作や雨よけ栽培など病害の発生しにくい栽培方式に転換し、化学農薬とうまく組合わせて、微生物が定着し活動できる栽培環境をつくることが大切になります。と言葉で言うのは簡単ですが、実際にやってみるときめ細かい管理が必要になりとても面倒で、費用も余計にかかります。
 米作りや家庭菜園の野菜づくりで一度微生物農薬を試してみませんか?もし効かなくてもすぐにあきらめずに微生物の性質を理解して、使い方の工夫をしてみて下さい。きっと上手に微生物と付き合えるようになるはずです。
最近、病害防除に使われ始めた微生物 農薬培地上でのタラロマイセス菌の菌糸と
分生子(胞子)
2006年1月
奈良県農業技術センター
環境保全担当 病害防除チーム 総括研究員 西崎仁博