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殺虫剤抵抗性害虫について

 みなさんは、家の中でゴキブリや蚊、ダニなどが発生したら、どんな対策をとるでしょうか?
ゴキブリならば殺虫剤のスプレー、蚊やダニならば家庭用くん煙剤が一般的でしょう。農作物に発生する害虫にも農業用殺虫剤がよく使用されます。このように、害虫の退治には一般に殺虫剤が広く使用されています。しかし同時に、殺虫剤が効かなくなった、いわゆる抵抗性害虫の発生が、数十年来の問題となってもいます。

 殺虫剤抵抗性は、同じ種類の殺虫剤を繰り返して使用するうちに、殺虫剤が効かない素質(殺虫剤抵抗性遺伝子)を持った虫だけが生き残っていくことで起こります。また、全ての種類の虫が殺虫剤に抵抗性を発達させているわけではなく、もともと抵抗性が発達しやすい種類の虫がいるようです。農業害虫では、アブラムシ類やハダニ類、アザミウマ類などの一部にこのような虫がいますし、衛生害虫ではチャバネゴキブリやアカイエカなどで高度な抵抗性発達が確認されています。これらの抵抗性害虫に共通する性質として、産卵数が多い上に、成虫まで発育する期間が短く、増殖能力が非常に高いことが挙げられます。また、駆除することが難しいため、近年の交通網発達に伴って世界中に分布を広げ、世界的な大害虫となっている点も特徴です。

 害虫の抵抗性発達を阻止する最も有効な対策は、殺虫剤を使わないことです。そのため、農業生産現場では、殺虫剤以外の手段、例えばネットで作物を覆うとか、天敵生物を放すとか、虫が嫌がる波長の光や粘着テープも利用されています。このような手段は、殺虫剤に比べると効果が緩やかで、ある程度の害虫が残ってしまいます。しかし、収穫物に被害がない程度まで抑えることができれば、少しばかりの害虫発生は目をつむろうという発想で使用されています。今後も農業分野ではこういった手段を利用する農家が増えていくものと思われます。しかし、ゴキブリやカなどの衛生害虫対策では、「少しばかりの害虫発生」に目をつむるのは困難です。ゴキブリが一匹くらい走っていても気にしない食堂で食事をしたい人はいないと思います。特に都市部では、処理が簡単で費用対効果が計算しやすいことから殺虫剤の利用が多く、抵抗性発達を加速させているようです。

 最近、夏場の蚊の対策として蚊帳が見直されているようです。身近なところからこのような取り組みを行うことが、重要になってくるのかもしれません。

<写真説明>殺虫剤に高度に抵抗性を発達させた野菜害虫
       であるミナミキイロアザミウマ(体長1.3mm)
2006年9月
奈良県農業総合センター    
環境安全担当 虫害防除チーム 主任研究員 井村岳男