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土づくり技術の変遷について

わが国の農産物はカロリーベースで6割近くが海外からの輸入に頼っている状況ですがこのような多量消費の時代がいつまでも続くとは限りません。BSE問題や無登録農薬の不正使用問題を契機に消費者からは国内産の安全で安心な農産物が求められるようになってきています。しかし、農業の生産現場では兼業農家や土地持ち非農家が増加する一方であり、専業農家がますます減少する傾向にあります。専業農家では野菜、花卉など施設栽培による高付加価値農業と水稲、果樹、畜産など規模拡大による低コスト化農業に2極分化しつつあります。それら専業農家では施設内土壌は石灰やリン酸資材など土壌改良剤の多用によるアルカリ化やリン酸の過剰な蓄積が多くみられるようになっています。また、水田土壌は大型機械の耕うんにより作土が浅くなり硬い層が作土直下に出来るなど土壌状態の悪化が進んでいます。しかもそれら多くの圃場では有機物の投入不足による地力の低下、作物の連作による土壌病害の発生や生理障害が多く見られるようになっています。そこで古代から現在までの土づくり技術の移り変わりについてみてみましょう。土づくり技術の変遷については(表)のとおりです。

 古代は焼畑農業が中心でした。中世から江戸時代にかけては下草や油粕など地域内で産する有機物の利用が盛んとなり、明治後期になって硫安や過燐酸石灰など化学肥料が使われています。その後、第2次世界大戦期は化学肥料不足で一時的に堆きゅう肥が使われましたが昭和60年代までは化学肥料の使用偏重が続いています。

 現在、水田や畑では堆きゅう肥など有機物の施用が依然として少なくなっており、しかも家畜糞尿が地域的にかなり偏在化し一部の地域では公害問題にもなっています。これからの安全、安心を支える健全な農業のあり方について考えてみますと、環境問題と併せて家畜糞尿や地域で産する余剰の有機物を地域資源として積極的に活用する地域循環型の新たな土づくりについて地域全体で取り組むことが大切であると考えます。

年 代 土づくりの方法
古代 焼き畑、牧野
中世封建時代 山野の草木やきゅう肥の施用
江戸時代 人糞尿、魚肥、油粕、山野の草木
明治初期~中期 刈敷や堆きゅう肥、石灰
明治後期~大正末期 過リン酸石灰、硫安、ダイズ粕、魚肥、油粕、緑肥
昭和初期~20年頃 硫安の大量使用
第2次世界大戦期 堆きゅう肥、緑肥
昭和20年~35年 堆きゅう肥、石灰資材、熟田や熟畑、有機物利用
昭和35年~ 化学肥料偏重、地力低下が問題化
昭和50年~ 全国的な土づくり運動始まる
昭和60年~現在 化学肥料偏重と畜産糞尿処理が問題化
2004.2
奈良県農業技術センター 
農業情報・相談センター所長 古山賢治