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植物とアレロパシー

 あまり聞き慣れない言葉ですが「アレロパシー」というのは「他感作用」と訳されており、その定義は『植物から放出される化学物質が、他の植物や微生物・昆虫に対して阻害的あるいは促進的な何らかの作用を及ぼす現象』とされています。我が国では、空き地や休耕地等においてセイタカアワダチソウが優先的に繁茂する場合に、放出された化学物質により他の植物生育を抑制する作用が代表的な事例として知られています。 

 現在、農業分野においてはこのアレロパシーの活用法として、草で草を退治することが研究されており、特定の雑草のみを抑制し、作物に害を与えない雑草防除法は、除草剤使用に比べて効果は低いものの、環境に与える影響が少ない利点があります。

 アレロパシーの作用は、雨や露によって葉から流れ出る、植物体の残さ(刈枝,落ち葉)から放出される、根からしみ出る、揮発性物質として放出される、等であることから、農業においてはアレロパシー植物の混作や輪作、植物体残さの地表面被覆等が活用されることとなります。 

 アレロパシーに関する研究はまだまだ未知の部分が多いのですが、具体的な事例としては、マメ科牧草の[ヘアリーベッチ]による果樹園や休耕地における雑草抑制及び野菜のハウス栽培におけるマルチ利用、日本在来の豆である[はっしょうまめ]による雑草抑制と害虫除け、[ヒガンバナ]のネズミ,モグラ,害虫除け等による畦畔管理、[ソバ]による雑草抑制、樹木類の落ち葉被覆による雑草抑制等があります。

 また、コーヒーやお茶に多量に含まれているカフェインは、マメ科以外の植物の発芽を著しく阻害するという研究報告があり、このことがアレロパシー作用であれば、茶栽培における整せん枝作業において畝間に刈り落とされる枝葉は、有機物の補給という面だけでなく、雑草の抑制に関しても効果を示している可能性があります。これらの活用法は、在来農法や伝統農法の古からの農民の知恵に学ぶところが大きいとされており、今後も活用されていくものと考えられます。 


アレロパシーによる雑草抑制に利用できる可能性がある植物の事例
利 用 法 植  物  名
混植・輪作
(制圧作物)
オオムギ,ライムギ,エンバク,ソバ,クローバー,
ヒマワリゴマ,ナタネ,スイカ,エンドウ
被覆・敷草
(マルチ)
クルミ,チャ,アカマツ,ナラ,カエデ,ポプラ,ユーカリ,ブナ,トウヒ,イチョウ,モモ,リンゴ,エニシダ, オキナグサ,クズ,ドクダミ,ハッカ類,サルビア類
緑肥
(被覆作物)
ハルガヤ,ペレニアルライグラス,トールフェスク,ムクナ類 ,アルファルファ,クローバー類,ベッチ類

1998年3月

奈良県農業試験場
茶業分場 主任研究員 福森茂樹